2019年05月3日
2021年8月1日改訂

調査報道グループ「フロントラインプレス」(以下「フロントライン」)、および同グループを運営する「フロントラインプレス合同会社」(以下「合同会社」)は、良質なニュース・報道コンテンツ等を制作、伝達し、調査報道を軸とした取材・報道活動を持続的かつ自律的に実施していくことを目的とする。また、それらの活動を通じ、21世紀にふさわしい報道組織を構築し、良質なニュースを制作する営みを次世代に引き継ぐことも目的とする。

フロントラインと合同会社は、「良質の報道」を追求し、「論より事実で」を重視する。社会のあらゆる問題に対応できるような人材を確保すると同時に、その適正な配置を常に考慮し、取材者の地域的な偏在をなくす努力も続ける。フロントラインの参加者は、経験や年齢等による「上下関係」を排して互いに尊重し合い、やがては報道組織の新しい文化も構築する。これらの活動指針は以下の3点に集約される。

・誰も知らない世界を誰もが知る世界に

・「主張」より「事実」を 「論争」より「対話」を

・多様な取材者が集える拠点づくりを

合同会社はフロントラインの活動を支えるに当たって、フロントラインのメンバーと業務委託契約を結ぶ。また、取材や組織の運営に当たっては、メンバーの中から「コアメンバー」を選ぶ。合同会社はその活動を支えるため、合理的な範囲で商業活動の推進を図る。

コアメンバー:編集責任を持つ。取材方針の協議、方向性などの決定を行う。

フロントラインと合同会社は上記の目的達成に資するため、「取材・執筆・編集に関するガイドライン」を以下の通り設け、適宜、公開する。

1. このガイドラインについて

「取材・編集・執筆に関するガイドライン」(以下、「ガイドライン」)は、調査報道グループ「フロントラインプレス」ならびに同グループを運営する「フロントラインプレス合同会社」がインターネット等を通じて、自社ホームページおよび他社媒体などに掲出・提供する報道コンテンツ(以下、「コンテンツ」)を制作する際、これに携わるメンバー(以下「参加者」)が遵守すべき事項を定める。また、メンバーではなくとも、フロントラインおよび合同会社と協業するすべての個人、法人に対して、このガイドラインの遵守を要請する。

このガイドラインは、参加者が自らの行動を判断する際の指針であり、コンテンツの制作の際、それぞれの参加者が賢明かつ責任感を持って、倫理的な判断ができるよう「全体的な方向性」を示している。ただし、このガイドラインだけではカバーできない範囲の問題が生じることは自明であり、そうした際に参加者は誠実にフロントライン内で情報や問題点等を共有し、合理的かつ倫理的で賢明な判断ができるように行動する。

合同会社と業務委託関係にある参加者が、その契約の範囲外で活動を行う際は、このガイドラインの縛りを受けない。

2. 総論

フロントラインと合同会社は、調査報道を軸として良質なニュース・報道等を広く社会に伝達することを目的とする。それを達成するために、参加者は高い倫理基準を保ち、「事実」を重視して正確な取材・記事執筆を行うことを何よりも大事にする。

参加者は、フロントラインにおける取材・報道活動等の重要性、社会性を自覚すると同時に、独立性や公正性に疑問を持たれるような行動をとってはならない。いかなる勢力からの圧力にも屈せず、干渉を排して、公共の利益のために取材・報道を行う。

参加者は、報道を通じて人種、民族、社会的地位、職業、宗教、性別、病気、障害等による差別や偏見等の人権侵害をなくすために努力する必要がある。取材や報道に際しては、基本的人権を尊重し、個人の名誉やプライバシー等を不当に侵害してはならない。

3. 取材

1)公正と正確さ、事実に対する忠誠

捏造や歪曲、事実に基づかない素材を収集してコンテンツを制作した場合、フロントラインと合同会社に対する信頼は、大きく毀損される。参加者は、正確で公正なコンテンツ制作を最優先すべきであり、その目的を達成するため、以下の全てのプロセスにおいて、虚偽や捏造、誇張等を行わないことを確認する。

・取材の端緒

・取材先の選択

・取材メモ等の作成

・記事等の執筆と編集

・記事掲載先の選択

・編集会議等における報告や協議

・講演等、外部における発言や執筆

全ての参加者は、自らの特定の利害関係、外部勢力からの圧力や誘導等を排除し、それらに影響されず、また、それらの影響から無縁であることを常に証明できるように努めなければならない。

参加者は、取材で得た素材(発言、面談取材での記録、資料、公開済み資料等)について、確認作業および裏付け作業等を怠ってはならない。

参加者は、信頼性のない情報を記事等に使用してはならない。最終的な裏付けを取っていない情報を記事等に使用する場合は、必ず編集責任者の判断を必要とする。同時に、最終確認が取れてないことを記事等で明示することを原則とする。

インターネット上で公開資料等を収集する場合、そのサイトが真に真実のものであるかどうかをURL などから複数回確認する。同時にその内容がHP 等で更新されていないかどうか、記事の掲出直前にも再確認する。

Wikipedia等、著者・編集者が明らかでないウェブサイトの情報は使用しない。

2)取材時の留意点

取材相手には誠実に接し、信頼を得るよう努める。

面談取材を優先する。電話やメール、オンラインのみの取材は、必要最小限に抑える。

取材時には、社会の健全な常識を踏まえて行動する。法令は原則、遵守する。ただし、報道の社会的意義や公共性、必要性と緊急性、その他の状況を検討し、特別な取材手段を選択することを排除しない。その際は、フロントライン内部での協議や合同会社の了解を得ることを原則とし、必要に応じてその経緯を公開する。

相手先に対しては原則、フロントラインの取材であることを明示する。複雑で秘匿性の高い調査報道においては例外も認めるが、編集責任者らに対する事前報告を怠らないようにする。

取材に際し、参加者が取材対象と特殊な利害関係にある時などは、取材を回避するか、他の者に取材の代行を依頼する。制作コンテンツについて、取材・報道の公正さに疑念を持たれないようにするためである。

参加者は取材やアポ取りに際し、安易に記事化を約束しない。同様に、記事の中での扱い方などについても、確定的な約束をしない。あるいは、記事の内容等について相手を誤信させるような言動は取らない。

フロントラインは原則、取材に応じたことをもってする対価(金銭、もしくは換金性の高い商品等)を取材相手に支払わない。その約束もしない。ただし、社会常識の範疇に含まれる手土産・飲食等を伴う取材は、その限りではない。

内部告発など情報源を完全に秘匿する必要がある場合、参加者はフロントライン内部においてもそれを徹底する。ただし、編集責任者や合同会社が、取材・記事内容等の確認作業においてそれら情報源の内実を知る必要があると判断した場合、参加者はそれを内部限定で開示するものとする。

オフレコは安易に採用せず、また相手に対しても安易に約束しない。オフレコを前提とした取材を提示された場合も、安易に同意しない。

取材時の録音は、相手の了解を得ることを推奨する。ただし、了解を得られず、かつ、その必要性があるケースも現実には存在することに留意する。

特定の個人を撮影するときには、相手の同意を得なくてはならない。街頭での撮影等不特定多数の人々を「開かれた場」で撮影するときには、その限りではない。ただし、掲載時には個人を識別できる情報等が写り込まないように努力することを推奨する。

いわゆる「反社会的勢力」への取材については、原則行わない。ただし、それらへの取材が真に必要であると判断される場合は、この限りではない。その際は、その必要が生じた場合を想定し、読者に十分に説明できるように備えておくことを条件とする。

3)取材記録の取り扱い

参加者は取材で得た資料(映像や録音等を含む)を整然と保管する。また、フロントラインや合同会社の求めがあった場合、原則それに応じる。

取材で得た資料等については、コンテンツ制作やさらなる取材等にのみ使用する。取材・報道目的以外に使用することは、絶対にこれをしてはならない。

 

4. 記事の執筆等および提供、公開

1)事実主義と実名主義

フロントラインの掲げる基本的な考え方に沿って、フロントラインの関わるコンテンツは「事実」をもって記述するものとし、参加者の考え方や理想等を記事盛り込むことは避ける。それをしなければならないときは、読者等が容易、かつ確実に「ファクト」部分と「オピニオン」部分を区別できるようにしなければならない。

フロントラインのコンテンツは原則、以下の項目を実名とし、付随的な情報も必要に応じて明示する。仮名や匿名は原則使用しない。

・個人

・組織や企業

・土地(住所は市区町村まで)

政治家、官公庁の幹部、公的団体の幹部、大企業・経済団体の幹部、各分野の実力者等については、とくに実名を徹底する。この範疇において実名を忌避する場合は、その理由を記事中等に明示する。

ただし、内部告発や調査報道等において、実名等を明示することによって、内部告発者や事案の当事者らが著しい不利益を被る場合、実名やそれを類推させる情報を使用してはならない。犯罪の被害者や社会的弱者等についても、この判断を適応する。

 

2)引用元、取材プロセスの明示、反論の扱い

記事中で他媒体の記事を引用したり、公的データを利用したりする場合は、引用元を明示する。

制作コンテンツについては、参加者による取材の経緯、方法等が分かるように「取材プロセス」を、必要に応じて、可能な限り明示する。

写真の使用に際しては、必要に応じて撮影場所や日時を明示する。ただし、同一の撮影場所・撮影日時がコンテンツ上で連続する場合等は、この限りではない。

記事等において、相手の不正・不作為、あるいはそれを疑われる事柄を扱う場合、必ず、相手の言い分や反論を十分な文字数等をもって掲載する。相手からの返答等が得られない場合は、どういう形での質問に対して返答がないのか等を明記する。

コンテンツ制作に関し、相手側にその内容や完成品を事前に示したり、伝達したりすることは、外部勢力の介入を防ぐためにも、厳にこれをしてはならない。ただし、長尺のインタビュー記事や専門家による専門的な見解等を記載する場合は、「原則、本人に執筆してもらうところ、参加者がこれを代行した」という考え方に基づき、当該部分についてのみ、事前の提示を認めることがある。

3)表現方法やその他の留意事項

コンテンツ制作の最終作業は、フロントラインの「コアメンバー」もしくは「合同会社」による最終確認とする。これらを経ずに、フロントラインの記事が掲出されることはない。

記事や写真、動画等、形式を問わず、コンテンツの表現においては、品位と節度を保つ。暴力、や残虐行為、性、憎悪を煽る表現等については特段の配慮を要する。

人種、民族、社会的地位、職業、宗教、性別、病気、障害等に関して、差別的な語句を使用することは、厳にこれをしてはならない。記事の全体においても、差別や偏見を助長したり、人や団体等を侮蔑したりしてはならない。さらに男女の役割分担に関する表現等、ジェンダー(社会的性差)の偏りを固定させる表現は、使ってはならない。

コンテンツにおいては、難解な表現を避け、できるだけ平易な文章を用いる。映像作品においても、分かりやすさを重視する。

文字の表記や用字用語については原則、共同通信社発行の「記者ハンドブック」最新版を使用する。英語や韓国語、中国語等での掲出については、別途、定める。

コンテンツの掲出後、その記事等に直接関係する人からの抗議等があった場合、参加者は速やかに「コアメンバー」または合同会社または顧問弁護士に連絡する。それなくして、参加者は個人の判断で対応してはならない。また、それら個別の対応が、フロントラインまたは合同会社、または掲出先媒体の対応と同一のものであると相手に誤診させてはならないし、対応に関して何らかの約束をしてはならない。

フロントラインのコンテンツ制作に関し、コアメンバーや合同会社の了解を得ずに、内部の制作状況について、これを外部講演等で明らかにしたり、SNS 等で拡散したりしてはならない。

TwitterやInstagram、Facebook等で、フロントラインの制作物を拡散する時に自己の見解等を付加する場合、上記の了解を得ずに内部の制作状況等に言及してはならない。

参加者は当然、それぞれの思想信条を持っているのであり、それらを社会に伝えたり、活動したりする自由をフロントラインと合同会社は妨げない。ただし、それらの主張や活動を広めるためにフロントラインのコンテンツ制作等を利用してはならない。

※このガイドラインは随時見直しを行います