◆林幹雄氏を「起訴相当」に、と検察審査会に申し立て
自民党裏金事件に関連し、政治資金規正法違反で刑事告発されながら、嫌疑不十分で不起訴となった自民党衆院議員で元経済産業大臣の林幹雄氏(千葉10区)について、神戸学院大学教授の上脇博之氏が9月9日、林氏らを同法違反で東京検察審査会に審査を申し立てた。「起訴相当」の議決を求めている。
林幹雄氏は、父も自民党の国会議員だった2世議員。これまで国家公安委員長や特命担当大臣(北方・沖縄・防災)、経済産業大臣などを歴任した。2023年9月からは経理が適正に行われているかどうかを掌握する「自民党経理局長」を務めている。
◆二階派の議員も次々刑事告発
一連の裏金事件では、政治資金パーティーのパーティー券販売収入のうち一定金額が派閥から各議員にキックバック(還流)されたものの、その資金を政治資金収支報告書に記載せず、裏金になっていた実態が日本共産党の機関紙「しんぶん赤旗」や上脇教授らの刑事告発で明るみになった。裏金の大半は安倍派(清和政策研究会)によるものだったが、二階派でも裏金が発覚している。
二階派で裏金を受領していたことが判明したのは、会長の二階敏博氏(和歌山3区)、元復興大臣の平沢勝栄氏(東京17区)、元総務大臣の武田良太氏(福岡11区)、元衆院議員の福井照氏(比例四国ブロック)、現衆院議員の宮内秀樹氏(福岡4区)、参議院議員の衛藤晟一氏(比例代表)、それに林幹雄氏の7人。このうち、林氏は自身の国会議員関係団体「大樹会」が2018年以降の5年間で1608万円の裏金を受け取っていながら、その事実を政治資金収支報告書に記載していなかった。
◆林氏は「嫌疑不十分」、会計責任者は「起訴猶予」
こうした実態を前に、上脇教授は今年1月21日、2020年以降の資金に関して7議員および裏金を受け取った政治団体の関係者ら計16人を一斉に刑事告発していた。さらに、5月15日には2019年分も刑事告発していたが、東京地検は7月8日、二階派の議員全員を不起訴とした。「大樹会」の代表である林氏は嫌疑不十分で不起訴、会計責任者を兼任する事務責任者は起訴猶予だった。
この東京地検の判断に関し、上脇教授は「不起訴処分はおかしい」として、まず林氏とその関係者について、東京検察審査会への申し立てを行った。残る6議員の関係分についても今後、一件ずつ申し立てを行う予定だ。一政治団体ごと別々に申し立てを行うことによって、検察審査会では一案件ずつ審議されることになる。検察審査会に選ばれた市民に一件、一件熟慮して判断してほしいという考えに基づくものだという。
上脇教授は次のように話している。
「東京地検特捜部はまとめて7月初旬に不起訴にしたが、そのほとんどが、会計責任者らは起訴猶予、議員らは嫌疑不十分だった。とても捜査が尽くされているとは思えない。裏金の処理は議員の判断なしに会計責任者の独断ではできるはずがないため東京検察審査会には起訴猶予だった会計責任者だけではなく、嫌疑不十分だった林議員についても“起訴すべき”と議決してほしい」