メディア企業への財政支援は是か? 報道の質と多様性の確保が目的 スイスで国民投票へ

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 政府が直接メディア企業を財政支援するのは是か非か。それをめぐる国民投票が2月13日、スイスで行われる。伝統的メディア企業が相次いで経営苦境に陥る中、政府が直接資金を投入することで、報道メディアのデジタル化を促進して存続させ、報道の多様性と質を保つ狙いだ。swissinfo.ch(日本語版)が伝えている。

 仮に日本で、政府が新聞社やテレビ局に政府が直接的な財政支援を行うと言えば、「政府の報道コントロールを受ける」「報道が権力に忖度するのではないか」といった批判が巻き起こりそうだ。

 しかし、INSIDE STORYの記事『Journalism is in peril. Can government help?』などによると、欧州では1970年代ごろから政府によるメディア企業への財政支援が行われている。「国境なき記者団」が毎年公表している報道の自由度ランキングで、決まって上位に顔を並べる北欧諸国やオランダなどでも政府の支援は継続されてきた。とくに、コロナ禍で広告出稿が減り経営が苦しくなってきた中小のメディア企業に対しては、支援を強化する方向で進んでいる。自由市場に任せてメディア企業が消えたり弱体化したりすれば、結局は報道の多様性が失われ、重要な調査報道も減るという危機感がある。

 swissinfo.chによると、国民投票の対象は、報道の質と多様性を全国で保障することを目的とする「民間メディア支援関連法案」。この法案では、既存の財政支援を強化するとともに新たな財政支援を導入するため、年間の助成金を1億5100万フラン(約190億5千万円)増額し、総額2億8700万フランに引き上げる。オンラインメディアへの直接的な資金投入も予定されている。

 記事の中で紹介されている識者のコメントによると、政界やメディア業界は長い間、国家の介入が大きくなるのを恐れて、メディアへの直接的な支援策は「絶対にだめ」と考えてきた。しかし、デジタル化によってメディアの経営難が深刻化し、コスト削減や合併が増え、メディアの多様性を維持する1つの手段として直接支援が検討されるようになったという。

 日本でも報道の中心を担ってきた新聞社の経営は厳しさを増し、取材体制や部数の減退は著しい。他方、新興のネットメディアもまだ新聞社に代わる存在にはなり得てない。このまま進めば、報道空白域“ニュース砂漠”の出現も絵空事ではないかもしれない。その際、欧州のようなメディア企業への財政支援が議論されるのかどうか。

 

スイス政府の公式HPから

 

■参考
swissinfo.ch『デジタル化で苦戦する従来メディア、欧州では国による直接支援も』(2022年2月1日)
swissinfo.ch『メディアへの助成金は増やすべき? スイスで国民投票へ』(2022年1月18日)
INSIDE STORY『Journalism is in peril. Can government help?』(2017年6月29日)

 
   
 

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