内部告発者は“報復”から守られるのか? 法改正、国会審議の行方は

  1. オリジナル記事

◆「役所には内部告発者を守る気概がない」

 首相の諮問機関である内閣府消費者委員会専門調査会は2018年末、この法律の改正に当たっての報告書で、通報者に報復した企業などへの「行政措置」(企業名の公表など)を要求している。それなのに、なぜ、改正案に盛り込まれなかったのか。

 この法律に詳しい中村雅人弁護士(東京)は言う。
 「報告書の要望のうち、改正案の条文から唯一、すっぽりと欠落したものがある。それが報復企業に対する行政措置の導入です。専門調査会の報告書は答申ですから、法律は答申に沿って作られるべきなのに……。(通報者への)不利益取り扱いに関して、(法案は)答申を無視しています。政府は附則に3年後の見直しを記し、付帯決議に『不利益取り扱いの是正に向けた取り組みを進める』などと入れればいいと思っているのでしょう」

中村雅人弁護士(撮影:本間誠也)

 取材を進めていくと、その背景として日本経済団体連合会(経団連)をはじめとする経済界の意向に加え、同法を所管する消費者庁のマンパワー不足を指摘する声が複数の関係者から聞こえてきた。政府案ができる前の自民党PTでは「報復した企業に厳しいペナルティーを科さないと実効性のある法律にならない」と主張する議員もいたが、大きな流れにはならなかった。
 中村弁護士は「消費者庁は本当に情けないし、気概がない」と前置きし、こう指摘する。
 「消費者庁の幹部は、消費者団体や弁護士の集まりに来て、どう言ったと思います? 『自分たちには通報者に不利益取り扱いをした企業に対して行政処分できるだけの能力はない。スタッフもいない』と。『公益通報の対象となる法律は何百もあるし、不利益処分(報復)が通報したことを理由にしているかどうか、自分たちには事実認定する力がない』なんて言っているんですよ」

撮影:穐吉洋子

 マンパワー不足という“言い訳”に対し、中村弁護士はこう言う。
 「そんなのは消費者庁が司令塔の役目を果たして、他省庁の協力を仰げばいいだけの話です。特に労働紛争では、厚生労働省が全国に労働局を持っていて紛争処理をいっぱいやっているわけですよ。『そうしたものを活用すればいい』と言うと、消費者庁の幹部は『厚労省が協力してくれない』とこぼす。厚労省に向かって『バシッと司令塔機能を発揮して、やってくれ』となぜ言えないのか。国会審議の中心は報復企業に行政措置を導入するか、否かになるでしょう」

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  この記事は「内部告発者は“報復”から守られるのか? 法改正、国会審議の行方は」の冒頭部分です。2020年4月1日、Yahoo!ニュースオリジナル特集で公開されました。取材は、フロントラインプレスの本間誠也さん。内部告発者やその制度、仕組みの問題点について取材を続けています。

 記事はこのあと、「スルガ銀行不正 行員は報復を恐れて内部通報しなかった」「通報の漏洩には罰則『あのとき、その条文があれば』」「EUの条文は具体的で実効性がある」などと続きます。

 記事の全文はYahoo!ニュースオリジナル特集で公開されています。下のリンクからアクセスしてください。Yahoo!へのログインが必要になることもあります。
内部告発者は“報復”から守られるのか? 法改正、国会審議の行方は

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本間誠也
 

ジャーナリスト、フリー記者。

新潟県生まれ。北海道新聞記者を経て、フリー記者に。

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