隠れ暮らす「女性ホームレス」密着して見えた実態 京大准教授が7年かけて問題点を浮き彫りに(2021・05・16 東洋経済オンライン)
「女性の貧困」――。
近年、注目されているテーマだが、2000年代初めから「女性ホームレス」に着目し、研究を続けてきた人がいる。京都大学大学院文学研究科准教授の丸山里美氏は7年間にわたって、東京と大阪で女性ホームレス33人へのフィールドワークを行い、問題点をあぶり出した。「女性の貧困」の深淵とは何か、その実態を測る難しさはどこにあるのか。「ニッポンのすごい研究者」 は今回、女性ホームレスの研究者にスポットを当てた。
女性ホームレスが暮らすテント(提供:丸山里美氏)
◆男性ホームレスとの大きな違いは「結婚歴」
――丸山さんが調査された女性ホームレスには、どんな特徴があるのでしょうか。
私の調査はサンプル数が33と少なく、聞き取りの方法や時期が統一されていないため、統計的な価値は高くありません。ただ、女性に特化した調査はこれまでほとんど実施されていません。
そこで女性ホームレスの特徴をつかむために、対象を男性に特化した厚生労働省の「ホームレスの実態に関する全国調査」(おおむね5年ごとに実施)の2007年版と、私が2003年から2009年にかけて実施した調査で比較しましょう。
厚労省の調査は野宿者のみを対象にし、私の調査は野宿者と施設居住者を対象にしています。
私は東京と大阪の路上で会った19人、東京の福祉施設で会った14人、計33人から生育家族や学歴、職歴、居住場所、同居人といった生活史を詳細に聞き取っています。このうち、夫が失業して2人ともホームレスになった人は11人。本人の失業でホームレスになった単身女性が15人。夫や家族との関係性を失ってホームレスになった人が7人。これらのうち、野宿経験者は26人でした。平均年齢は59歳です。
男性ホームレスとの大きな違いは、まず、結婚歴です。厚労省の調査によると、男性のホームレスには結婚経験がない人が半数以上もいるのですが、女性の場合、9割近くに結婚歴(内縁関係含む)があり、そのうち半数以上が複数回しています。
貧困女性にとって男性のパートナーを持つことは、生活を維持するための手段になっている実態が改めて浮かび上がります。ホームレスの人は総じて学歴が低いのですが、女性では「最終学歴が中学校以下」という人が半数以上で、男性よりもさらに低い。職歴も大半はパート。多くの人が清掃、水商売、旅館の住み込み、飯場の賄いなどに従事しています。
――その女性たちは、どのようにしてホームレスになったのでしょうか。
いくつかパターンがあります。夫との死別や離別によって単身となった女性が失業する場合、もともと単身の人が病気や高齢などで働けなくなる場合、夫をはじめ家族との関係がうまくいかなくなる場合などです。
中高年の女性ができる仕事は、低賃金の不安定労働に限られていますから、失業保険や厚生年金の対象にならない人も多い。働けなくなると、すぐに生活に困窮することになりがちです。
例えば、本人が失業したケース。60代の女性は、中学校卒業後に正社員としてガラス工場で働き始め、22歳で転職します。26年間勤めますが、そこでは失業保険や年金に入っていませんでした。
給料が上がらず生活が苦しくなったため、その会社を辞めて清掃のパートを2つ掛け持ちします。でも、アパートの家賃には足りない。友人からの援助で賄っていましたが、次第に友人宅に居候するようになった。その生活が10年ほど続きましたが、高齢になって仕事を解雇されると、友人への借金が気になって居候しづらくなり、野宿に至りました。
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この記事は<隠れ暮らす「女性ホームレス」密着して見えた実態 京大准教授が7年かけて問題点を浮き彫りに>の冒頭部分です。2021年5月16日、東洋経済オンラインで公開されました。
取材は、フロントラインプレスの宮本由貴子さん。コロナ禍では、とくに立場の弱い女性に経済的な困難が押し寄せています。そうした背景もあって、この記事は、Facebookで3000以上もシェアされるなど多くのユーザーの関心を呼びました。
記事の全文は、東洋経済オンラインで読むことができます。下記リンクからアクセスしてください。写真の配置などは異なっています。
隠れ暮らす「女性ホームレス」密着して見えた実態 京大准教授が7年かけて問題点を浮き彫りに