大調査 確定申告で政治献金を取り戻す国会議員たち

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大調査 確定申告で政治献金を取り戻す国会議員たち (2021.5.24 SlowNews)

 情報公開請求と悉皆調査によって明らかになった「カネの抜け道」。政治家が自らの政治団体に寄付し、その還付申告によって自身の税金を取り戻す――。こうした耳を疑うようなカラクリを使う政治家の回答は? 「政治とカネ」のクリアな関係を考える。

 政治家が自らの政治団体に寄付し、その還付申告によって自身の税金を取り戻す――。こうした耳を疑うようなカラクリが今もまかり通っている。「個人の政治献金については税額控除(控除率30%)か所得控除を受けることができる」という租税特別措置法の優遇措置のことである。自分が代表を務める政党支部に寄付をした政治家が、これを利用して翌年の確定申告で寄附金控除を申請すれば、なんと、寄付額の約3割が戻ってくる。政治家にとっては「自分の政治活動のために寄付した一部を税金で負担してもらう」という大変都合の良い制度だ。

 さすがに多くの政治家はその利用を自重しているが、この制度を利用し、還付金の恩恵に預かっている国会議員は少なくない。

 調査報道グループ「フロントラインプレス」は、かねてから政治とカネに関する独自調査を続けている。2019年には、公金も投入されている選挙運動の資金について「余剰金」を出しながらもその使途が明らかになっていない状況を衆参両院議員に対する悉皆調査で公にした。

 今回着目したのは、政治献金の還付申告だ。情報公開請求によって全国の都道府県選挙管理委員会や総務省から関係書類を相次いで入手し、分析した。その結果、与野党を問わず、衆議院と参議院を合わせて計39人が還付申告に必要な書類を各選管から受け取っていたことを突き止めた。直近の2019年の寄付に限っても、必要書類を受け取った議員は15人を数えた。自らの政治献金について還付してもらう態勢を整えたのである。

 では、こうした国会議員はその書類を行使して、本当に「政治献金の約3割」を納税分から取り戻そうとしたのか。各議員の回答や姿勢から何が見えるのか。

 以下、実態をひもといていこう。

◆法の特例を利用し、政治家自身が献金分の税額控除を受ける

 「個人が行う政治献金は寄付金控除の対象となる場合があります」

 国税庁ホームページのタックスアンサー(よくある税の質問)は「No.1154 政治献金と寄附金」の冒頭でそう記している。一定の要件を満たせば、政治献金は税額控除の対象となり、寄付金額の一部が戻ってくるという制度の概要を解説したものだ。

国税庁HPのタックスアンサー。「政治献金と寄附金」はNo.1154で説明されている

 この優遇措置はそもそも、個人による政治活動への寄付を促すことで、国民の政治参加を活発にする狙いがある。

 控除の対象となる寄付のあて先は、政党(支部を含む)や政治家の後援団体、派閥の政治団体、公職の候補者・立候補予定者の後援団体など。租税特別措置法では、寄付額の約3割が税額控除されるか、あるいは、課税対象の所得総額から寄付額を引いて税額を計算すると定められている。したがって、例えば税額控除の場合、仮に500万円を寄付したとすると、翌年の確定申告の際に寄付金控除を申請すれば、約3割の150万円がすでに収めた税金の中から戻ってくる計算だ。

 もっとも、租税特別措置法には例外規定がある。「寄付をした者に特別の利益が及ぶ」場合は寄付金控除を申請できない、とされているのだ。具体的には、どのような事柄を指すのだろうか。財務省主税局税制一課に取材すると、担当者は次のように回答した。

 「政治家自らが自分の資金管理団体や後援会に寄付したり、政治家が互いの後援会に寄付を出し合ったりする場合などが『寄付した者に特別な利益が及ぶ』に該当します。これらの寄付は寄付金控除の対象とはなりません」
ところが、これには“抜け道”がある。

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 この記事は「大調査 確定申告で政治献金を取り戻す国会議員たち」の冒頭部分です。2021年5月24日、サブスクの「スローニュース」で公開になりました。これまでに例のない、「全国会議員を対象とした調査」です。
記事は同サイトで全文を読むことができます。下記のリンクからアクセスしてください。会員登録が必要です。記事の中には、実際に税金を取り戻した議員らの一覧や言い分なども大型のリストとして掲載されています。
https://slownews.com/stories/tbJzmqc3cDA/episodes/u4lRAx8nXE0

 政治家が自らの政治団体に寄付をした際、所定の手続きを取れば、確定申告の際におよそ3割が還付されるという仕組みが温存されています。これだけでも「えっ」となりそうな話ですが、実際にこの“抜け穴”を使って還付を受けたり、受けようとしたりした国会議員がたくさんいました。単に「せこい」で済ませて良いのか。取材を担当したフロントラインプレスの本間誠也さんは「政治家の政治姿勢そのものが現れていると思う。どこを見て政治をしているのか、その大きなモノサシの一つです」と話しています。
また、この記事のエッセンスは、東洋経済オンラインにも掲載しています。以下のリンクからアクセスしてください。
https://toyokeizai.net/articles/-/430897

本間誠也
 

ジャーナリスト、フリー記者。

新潟県生まれ。北海道新聞記者を経て、フリー記者に。

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