検証 32兆円の復興予算

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検証 32兆円の復興予算 (2021.5.6 SlowNews)

 東日本大震災から10年。この間、東北の復興に注ぎ込まれた政府の復興予算は総額で約32兆円に達している。津波被害を避けるための住宅用地のかさ上げや高台移転、さらには道路整備、産業再生などに支出されてきたが、被災者には、いまだに自宅を再構築できない人が大勢いる。福島第一原発の周辺に住んでいた人たちは、各地に散り散りになったままだ。途方もない予算は、そうした人々を助けるために適正に使用されてきたのか。公共事業にフォーカスし、使われ方を検証する。

◆第1回 防潮堤工事 なぜ落札率が異常に高いのか?

 「東日本大震災から10年」という節目の日から、早くも2カ月ほどになった。この間、東北の復興に注ぎ込まれた政府の復興予算は総額で約32兆円に達している。その多くは、津波被害を避けるための住宅用地のかさ上げや高台移転、さらには道路整備、産業再生などに支出されてきた。大震災の被災者には、いまだに自宅を再構築できない人が大勢いる。福島第一原発の周辺に住んでいた人たちは、各地に散り散りになったままだ。約32兆円という途方もない予算は、そうした人々を助けるために適正に使用されてきたのだろうか。
「復興」や「除染」などに費やされた巨額予算を「食いもの」にしたケースは何度か発覚している。最近でも、例えば、読売新聞は今年3月1日、大手ゼネコン・鹿島(JV含む)から被災建物の解体などを請け負った福島県内の下請け業者が、鹿島の元東北支店幹部に対し、受注の見返りに2億円を渡していたと独自に報じた。

 落札率。

 調査報道グループ「フロントラインプレス」は今回、公共事業の入札が適切だったかどうかを示す、最も基本的なこの基準を用いながら、まずは防潮堤に対象を絞って調べることにした。情報公開制度を駆使し、関係書類をチェックし、東北を丹念に歩く。そうした積み重ねで見えてきたものとは。

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 この記事は「検証 32兆円の復興予算」の冒頭です。2021年5月6日、サブスクの「スローニュース」で公開されました。取材はフロントラインプレスの本間誠也さん。記事はスローニュースのサイトで全文を読むことができます。下記のリンクからアクセスしてください。会員登録が必要です。
https://slownews.com/stories/lWZVoz3lPv4/episodes/Q3BHiVaqMfs

 東日本大震災から10年が過ぎ、東北は次第に復興を遂げています。同時に検証すべき課題や問題も数多く残されています。総額32兆円に達する復興予算の使途は、その最たるものでしょう。この連載ではまず、防潮堤事業に注ぎ込まれた巨額予算の現場を追いました。これに限らず、復興予算の使途を検証する取材は現在も継続中です。

 

本間誠也
 

ジャーナリスト、フリー記者。

新潟県生まれ。北海道新聞記者を経て、フリー記者に。

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