なぜ、米軍基地でオミクロン株が広がるのか? 日米地位協定で検疫に“抜け穴”

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 新型コロナウィルスのオミクロン株が、日本でも広がっている。その水際対策の大きな“抜け穴”となっているのが、米軍だ。日本政府はオミクロン株の水際対策として、外国人入国禁止措置を実施しているが、米軍関係者は日米地位協定に基づき、米本国から直接在日米軍施設に入ることができる。在沖縄米軍では12月10日現在、直近の1週間で186人の感染があったという。

 この“抜け穴”とは、どういうものか。なぜ、基地内で感染が拡大しているのか。

 沖縄タイムスは12月19日に『沖縄社会に迫るオミクロン株 入国後の“規制の穴”判明 接種済みなら基地内を自由に移動』と題する記事を公開した。その中で「隊員は入国後、一定期間は基地外への外出が原則禁止されるなどの行動制限を受ける。しかしワクチン接種が完了している場合は規制が緩く、基地内であれば移動や施設利用が認められる。行動制限期間も10日間と短い。マスク着用も、接種完了者は義務付けられていなかったようだ」と記している。

 NEWSポストセブンが12月21日に公開した『オミクロン株「沖縄米軍クラスター」岸田首相が米国に一切もの言えない事情』では、政治ジャーナリストの見解として以下のような内容が紹介されている。“抜け穴”の正体は日米地位協定にある、との指摘だ。

 感染した米兵らはいずれも米軍機でアメリカ本国から嘉手納基地へ直接入国しています。岸田首相は全世界からの外国人の新規入国を停止する“鎖国政策”を主導しましたが、米軍だけは例外で、口を出すことができません。日米地位協定で旅券や査証(ビザ)に関する国内法の適用が除外されているためです。入国した米軍人は、14日間の移動制限があり、公共交通機関の利用を禁止されていますが、それも米軍内の内規に過ぎません。

 日米地位協定に関しては、これまでも米軍人の犯罪を日本国内で裁けないという問題がありましたが、今新たに新型コロナの水際対策でも一種の“治外法権”になってしまうという難題が浮上しました。本来なら日本政府として議論すべき重要課題ですが、岸田政権にその様子はありません。それは政権内に、日米地位協定に触れるのはタブーという共通認識があるからです。

 米軍兵士らは日本の検疫を通過せず、米本土やグアムなどの基地から直接、日本の米軍基地に入るケースが多い。沖縄だけでなく、東京の横田基地、神奈川県の横須賀基地なども例外ではない。そこで生じる“抜け穴”については、昨年(2020年)8月に公開された東洋経済オンラインの記事『米軍関係者「日本に何人いるか不明」という珍妙』でも触れられている。取材・執筆フロントラインプレス所属の当銘寿夫記者。

 日本国内でのアメリカ軍の地位などについて取り決めた日米地位協定によると、アメリカ軍関係者は出入国管理法の適用から除外されている。アメリカの軍属やアメリカ軍関係者の家族が日本に入国する際はパスポートが必要だが、軍人はアメリカ軍の身分証明書と旅行命令書を持てば入国要件を満たし、パスポートは不要だとの取り決めだ。そのため、日本側は入国するアメリカ軍関係者に対し、必ずしも検疫もできていない。

 さらに、日米地位協定を適用されるアメリカ軍人・軍属やその家族らは、アメリカ本国からのチャーター便「パトリオット・エクスプレス」を使えば、成田空港など民間の空港を経由せず、在日アメリカ軍基地内に直接降り立つことができる。在日アメリカ軍司令部は新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、公式サイトで「三沢、岩国、佐世保、沖縄に到着するための最良の方法はパトリオット・エクスプレスを経由することだ。これにより、最終目的地へ途切れなくたどり着くことができる」と日本の民間空港を回避した入国を促している。

■参考URL
沖縄タイムス『沖縄社会に迫るオミクロン株 入国後の“規制の穴”判明 接種済みなら基地内を自由に移動』
NEWSポストセブン『オミクロン株「沖縄米軍クラスター」岸田首相が米国に一切もの言えない事情』
東洋経済オンライン『米軍関係者「日本に何人いるか不明」という珍妙』

 
   
 

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