◆「特定妊婦、兵庫県で増加続く」と神戸新聞
経済的困難や予期せぬ妊娠などで育児が困難になる恐れがあり、出産前から支援が必要な女性を「特定妊婦」と呼ぶ。そうした妊婦が増加傾向にある。
神戸新聞が独自取材で集計したところによると、兵庫県内の特定妊婦は2018年度に636人、19年度689人、20年度712人と増加した。この間の妊娠届け出数は減少している。コロナ禍に入った20年度の妊娠届けは前年度より6%減少したが、逆に特定妊婦は3.3%増になった。
特定妊婦は、2009年施行の改正児童福祉法で明記された。「予期せぬ妊娠」「身近な支援者がいない」「経済的困窮」「若年」などの妊婦が対象となるものの、細かな認定と支援の内容は自治体の判断に任されている。このため、市町村はそれぞれ独自の基準を設けており、実際に支援が必要な妊婦は統計上の特定妊婦の数より相当多いと見られている。
◆支援の必要な妊婦「全国で5万6000人」と読売報道
読売新聞は『孤立や貧困・若年妊娠…要支援の妊婦5・6万人』という記事(2022年1月14日)の中で、同紙が全国主要都市を対象に調べた結果として、次のように伝えた。
孤立や貧困、病気などで支援が必要と自治体が判断した妊婦は2020年度、7人に1人の割合に上ることが、読売新聞が全国の主要都市に行った調査で分かった。支援の必要性は自治体に妊娠を届け出た際などに判断されている。法律で特に支援が必要と定義された特定妊婦のほかに、多くの自治体が独自の基準でサポートする妊婦の存在が明らかになった。
調査は昨年11~12月、政令市、県庁所在地、中核市、東京23区の計109自治体に実施。98自治体(90%)から有効回答を得た。
98自治体の20年度の妊娠届出数は計36万6918人。各自治体が支援が必要だと判断した妊婦は少なくとも計5万6725人(15・5%)に上った。このうち特定妊婦は計5754人。自治体が「ハイリスク妊婦」などとして独自に支援すべきだと考える妊婦は計5万971人だった。支援が必要な妊婦の割合は18年度は13・9%、19年度は15・2%と増加していた。
◆特定妊婦を救え! その現場では
特定妊婦については、出産や育児を個人に負わせるのではなく、社会全体で支援していく必要があるとの認識が次第に広まってきた。例えば、福岡市では20220 年度から、特定妊婦らを支援するため、妊娠期から子どもの就学期まで一貫してサポートする拠点施設を全国で初めて整備する。
では、特定妊婦をめぐって足元ではどんな状況が起きていたのか。その点は、フロントラインプレスの伊澤理江氏が『一人で抱え込まないで ――「特定妊婦」支援で守る新しい命』の中で、その実相を伝えている。特定妊婦という言葉が今ほど広がっていない2018年10月に発表された記事だが、産科医、助産師、保健所、児童相談所などの関係者を丹念に取材した長編ルポだ。「とにかく母子を救え」という視点の記事は、今も十分に読ませる。
『経済苦や予期せぬ妊娠…支援必要な妊婦、兵庫県内で712人 コロナ禍で増、妊娠届け出は減』(神戸新聞 2021年12月30日)
『孤立や貧困・若年妊娠…要支援の妊婦5・6万人』(読売新聞 2022年1月14日)
『一人で抱え込まないで ――「特定妊婦」支援で守る新しい命』(フロントラインプレス 2018年10月18日)