多忙で孤立「壊れる教員たち」の過酷すぎる現実 若手が上司に相談できず1人ですべて抱え込む(2020・6・28 東洋経済オンライン)
教育現場で「教員の孤立」が進んでいるという。授業準備や書類作成、生徒・保護者との対応、休日をつぶしての部活顧問。業務量がただでさえ多いうえ、相談できる上司や同僚が職場内におらず、メンタルをやられてしまうケースが少なくない。実際、文部科学省の調査によると、上司に仕事の相談ができる教員は35%にとどまっていた。「みんな忙しくて相談なんてできない。これ以上続けたら、自分が潰れてしまう」。そんな声があふれる現場を追った。
撮影:穐吉洋子
◆つねに孤独 ウソをついて教員を辞めた
北関東にある小さな飲食店で田中まさるさん(仮名)に会った。20代。5月の水曜日、夜7時。昼間は真夏のように暑かったのに、外は激しい夕立になっている。
「つらくて、教員を1年で辞めました。僕、この町にいないことになっているんです。『東北の実家に戻らなければならなくなった』とウソついて、職を辞めたんです。だから実名や写真は勘弁してください」
田中さんはなぜ辞めたのか。
「生徒指導で悩みがあっても誰にも相談ができないんです。担当している部活動では、言うことをきかない子もいて。昔みたく、ヤンキーってほどではないんですけど、周りと違う行動をし、かき乱す子が何人かいるんです」
「『いい加減にしなさい』と生徒を自分のもとに引き寄せたことがあるんですが、『死ね死ね。わー、胸ぐらをつかまれた最悪』と言われ……。そうした子のために何ができるのか、悩んでいました。でも、同僚教員には、『誰しも直面していることだから。キツかったけど、俺らも乗り越えてきたから、君も乗り越えて』という雰囲気が根付いていました」
関東の大学を卒業し、出身地での教員を目指した。正規採用の試験は落ちてしまい、臨時採用の形で公立中学校の教員になった。
「40人ほどの教員がいました。自分は3年生のクラスで副担任。運動部の副顧問。先生になって2日後です。あれっ、と思った。研修もなく、すぐ現場に出されました。新人ですよ? 『わからなかったら聞いて』と言われたのですが、聞けないんですよ」
「職員室ではみんな黙々と仕事をしていて、雑談のような会話はいっさい聞こえない。生徒は自分の言うことをなかなか聞いてくれないし、授業の内容はきちんと理解できているのか、と。保護者との対応も、これで大丈夫なのかと不安でした」
教員の仕事は「つねに1人で孤独だった」と田中さんは振り返る。当然、日々の仕事も忙しかった。
「部活の朝練があるので、朝6時には学校にいました。授業の準備などで夜は10時くらいまで。あと、先輩より先に帰れなかったんですよ。それが暗黙のルールとして根付いていました」
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この記事は<多忙で孤立「壊れる教員たち」の過酷すぎる現実 若手が上司に相談できず1人ですべて抱え込む>の前半部分です。2020年6月28日、東洋経済オンライン上で公開されました。
授業の準備や生活指導、部活指導…、日常業務の多忙さから学校教員がメンタルを病んでしまう事例は枚挙にいとまがないとされています。その要因には上司に相談できる教員は35%程度という職場環境もあるようです。フロントラインプレスは教員生活を1年で断念した20代の男性にインタビューを試み、若手教員を取り巻く現状をリポートしました。
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多忙で孤立「壊れる教員たち」の過酷すぎる現実 若手が上司に相談できず1人ですべて抱え込む