「海外ルーツ持つ子」増えた日本が知るべき現実 養育放棄、貧困、いじめ・・・困難に直面する若者(2021・04・17 東洋経済オンライン)
海外にルーツを持つ若者たちが近年、日本社会で存在感を増している。なかでも日本人とフィリピン人を両親とするジャパニーズ・フィリピノ・チルドレンは、日本とフィリピン両国に計数十万人いるともいわれる。その多くは父親が日本人だ。養育放棄や貧困、いじめなどの困難を経験した者も少なくない。そんな彼ら彼女らのエッセイ集が昨年、支援団体の手で世に送り出された。その過程で見えた、日比ルーツの若者たちの思いとは――。
撮影:野口和恵
◆日本人の父を捜す子どもたち
「大坂なおみ二重国籍騒動」「日本はすでに『移民大国』」「本物の日本人って誰?」……。ハーフや移民をめぐる報道を、特定NPO法人・JFCネットワークの事務局長、伊藤里枝子さんは毎日のようにチェックしてSNSやメーリングリストでシェアしている。
「日本のなかでも多様なルーツを持つ人が増えてきて、『日本はこうだ』『日本人はこうだ』とは、もう言えないですよね」
1980年代以降、フィリピンから日本へ働きに来る女性、ビジネスなどでフィリピンに渡航する日本人男性が増え、その間に多くの子どもたちが生まれた。その子どもたちを略して、JFC(ジャパニーズ・フィリピノ・チルドレン)と呼ぶ。両親のもとで幸せに育つ子どもも大勢いる一方、日本にいる父親から見放され、フィリピンに残される母子も相次いだ。
こうした女性や子どもたちを支えるため、1994年に弁護士と市民によって設立されたのがJFCネットワークだ。日本への渡航もままならず、日本の法律もわからない母親たちの相談に乗り、父親捜しや養育費請求、認知請求といった法的支援を続けてきた。
伊藤さんは大学生だった設立当初から活動に関わっている。
JFCが増える大きな要因となったのは、女性エンターテイナーたちの受け入れだった。ただ、彼女たちの受け入れは2005年以降、厳しく制限される。背景には女性たちが劣悪な環境で働かされ、重大な人権侵害が起きていると国際的に強く批判されたことがある。
しかし、それから15年以上経った今でも、相談は絶えない。伊藤さんによると、この10年ほどで10代後半~20代になった子どもたちから「父親を捜してほしい」との相談が増えているという。団体の設立当初は、子どもたちは幼く、母親を通じてしか声を上げることができなかった。今は違う。成長した子どもたちは、自らの意志で父親を捜そうとしているのだ。
伊藤さんは言う。
「お父さんに連絡がつくと『もう高齢で年金暮らしだから何もできない』と言われることがあります。でも子どもたちは父親に経済的な支援を求めてはいません。ただ自分のお父さんに会いたい。フィリピンで頑張って優秀な成績で大学を出た子、すでに就職した子も多いのですが、どの子も決まったように『父親を知らない自分は完成していない』と言うんです。父親の子どもだと認めてもらうことが、自分自身が尊厳を持って生きるために必要だと感じます」
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この記事は<「海外ルーツ持つ子」増えた日本が知るべき現実 養育放棄、貧困、いじめ・・・困難に直面する若者>の冒頭部分です。記事は2021年4月17日、東洋経済オンラインで公開されました。取材を担当したのは、フリーライターの野口和恵さんです。
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「海外ルーツ持つ子」増えた日本が知るべき現実 養育放棄、貧困、いじめ・・・困難に直面する若者