「警察の裏金」暴露した男が語る内部告発の苦悩 顔出し・実名の記者会見から17年経た今の思い

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顔出し・実名の記者会見から17年経た今の思い(2021・02・15 東洋経済オンライン)

 公益通報者保護法が施行(2006年)されてから、この4月で15年になる。内部告発者に対して、減給や解雇といった不利益な扱いをすることを禁じる法律だ。だが、日本社会では依然として、内部告発者を「組織の裏切り者」と指弾する風潮が消えない。組織の不正をただすはずの内部告発とは、いったい何か。それを実行した者には何が起きるのか。17年前(2004年)の2月、警察の組織的な裏金づくりを告発した原田宏二氏(83)にじっくりと尋ねた。

原田宏二氏

◆「内部告発者は裏切り者」は現在も変わらない

 原田氏は北海道警察(道警)の機動捜査隊長、警務課長、札幌西警察署長、防犯部長など重要ポストを歴任し、釧路方面本部長を最後に退職した。退職時の階級は警視長(警視総監、警視監に次ぐ階級)。その後は安田生命保険(現・明治安田生命保険)の参与となり、第2の人生を歩んでいた。「実名・顔出し」で組織的な警察の裏金づくりを告発したのは、第2の人生に踏み出していた時期である。「原田証言」が大きな力となって、道警は最終的に3000人余りの警察官・職員を処分し、総額約9億6000万円を国庫などに返納する事態になった。

 ――原田さんの内部告発から17回目の2月になりました。

 札幌の弁護士会館で記者会見を開いたのは、2004年2月10日のことです。公益通報者保護法の公布は同じ年の6月ですから、まさに内部告発者の保護が問題となっていたころです。

 組織内部の人間が、その組織内の不正行為を監督官庁や報道機関に知らせることは社会にとって必要かもしれませんが、一般的には、内部告発者は裏切り者です。それは公益通報者保護法が施行されて10年以上が経ち、「内部告発」「公益通報」という言葉が社会に広く浸透した現在も変わらないでしょう。

 私自身は、自分が真の意味で内部告発者だったかどうか、疑問を持っています。当時、大問題となった警察の組織的裏金づくりは、そもそも旭川中央警察署に勤務し、会計に携わっていたと思われる人物が、偽造された会計書類をテレビ朝日と共産党に送ったことが発端です。

 それが報道されて問題が拡大し、北海道議会でも大きな議論になっていた時期に、私は記者会見しました。本当の内部告発者は最初の人物です。私は結果的に、それをサポートしたにすぎません。

原田氏による実名告発を伝える当時の新聞

 ――原田さんは警視長にまでなった大幹部だったわけです。長い警察官人生の中で、ご自身も裏金づくりに関わっていたのでしょうか。

 裏金づくりに関与していなかった警察の人間は、当時、ほとんどいなかったでしょう。私自身、いろんな経験をしました。

 機動捜査隊長だったときは、ある部下が「私はもう、こんなことをしたくない」と言ってきた。警察官がパトロールなどに出た際、時間や距離によって「日額旅費」という経費が出ることになっています。これを現場に渡さず、書類を偽造してキャッシュにし、裏金として管理していたわけです。

 裏金の存在自体は私も知っていましたが、それまで、そうした訴えを受けたことはありません。でも、私は結局、何もできなかった。

◆架空の捜査ストーリーを必死に覚えた

 こんなこともありました。道警本部の防犯部門(現・生活安全部門)で課長をやっていたとき、数年に一度の国の会計検査院の検査が入ることになった。ところが、出張旅費や捜査協力者に渡す捜査費など、経費は全部裏金になっていたわけです。全部ですよ。

 予算を現金化して裏金にするために、架空の事件をでっち上げ、会計書類を作っていた。本当の事件捜査と会計書類上の記載はまったく一致していないのです。

 例えば、出張旅費の支出書類に、詐欺事件で捜査員を東京に出張させたという記載があったとします。この場合、東京出張だけでなく、事件そのものがでっち上げです。それを会計検査院に指摘されたらどうするか。私は架空の捜査ストーリーをたくさん作り、メモを作成し、検査官のヒアリングに備えて必死で覚えました。

 ――そうした裏金づくりが警察内部で広く行われていた、と。

 その通りです。

告発後、原田氏に届いた嫌がらせの手紙。その一部

 

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 この記事は<「警察の裏金」暴露した男が語る内部告発の苦悩 顔出し・実名の記者会見から17年経た今の思い>の前半部分です。2021年2月15日、東洋経済オンライン上で公開されました。

 記事の全文は同サイトで読むことができます。以下のリンクからアクセスしてください。写真の配置はサイトと異なっています。
「警察の裏金」暴露した男が語る内部告発の苦悩 顔出し・実名の記者会見から17年経た今の思い

 警察による組織的な裏金作りが初めて公に明らかになり、それを警察自身が認めたのは2000年代前半のことでした。北海道警察が最初です。その後、各府県の多くの警察で裏金作りが明らかになっていきます。

 警察庁を頂点とする日本の警察組織を揺るがした北海道警裏金問題で、その実態を実名告発したのが、警視長というポストにいた元大幹部の原田氏です。内部告発から17年。「この取材を受けることがおそらく、公では最後の活動」という原田氏に、内部告発に至るまでの気持ちや、警察関係者からと思われるその後の“報復”などについて、フロントラインプレスのインタビューに語ってもらいました。

 記事は前編と後編に分かれています。もう1本の記事も東洋経済オンラインのサイトで全文を読むことができます。下記のリンクからアクセスしてください。

悪事暴いても「裏切り者」内部告発の悲しい現実

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  FRONTLINE PRESSにはこの他、多くの取材記者や研究者らが加わっています。...
 

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