学校行事の大ケガを「自業自得と罵る教員」のなぜ 生徒は周囲から誹謗中傷を受けてPTSDに(2021・6・14 東洋経済オンライン)
◆名古屋市で長年行われてきた「トーチトワリング」
学校の事故で、わが子を亡くしたり、子どもに重い障害が残ったりした場合、当人や保護者らの「その後」は、どうなっているのだろうか。実は、学校側が不誠実な対応を取るケースが少なくない。事故の状況を知ろうとしても、隠蔽や調査の未実施に遭遇する。逆に学校側や周囲から追い詰められ、孤立する事態すら起きている。経済的に破綻するケースも少なくない。学校事故の「その後」に何が起きているのか。2回に分けて現場をリポートする。
事故を起こしたトーチトワリングの練習風景(提供写真=一部加工)
「私たちも問題にしたかったわけじゃなくて、本当のことを言ってほしかっただけです。そこでうそをつかれると、何も信用できない。何でうそをつくのか、っていうところから始まってしまう」
中学校で火をつけた棒を使った演舞「トーチトワリング」の練習中、右腕に大やけどを負った鈴木文也君(15)の母・加奈子さん(37)(いずれも仮名)は、そう憤る。この事故は発生当時、ネットで拡散され、ひどい状況が多くの人を驚かせた。
事故は2019年7月、名古屋市の中学校グラウンドで起きた。当時2年生だった文也君は、同級生と一緒にトーチの練習に励んでいた。
トーチトワリングとは、棒の先に巻きつけたタオルに灯油を染み込ませ、火を付けて回す演技。長年、名古屋市を中心に愛知県内の小中学校の野外活動で披露されてきた。文也君の学校では、夏休み中の野外活動として、男子生徒約30人が披露することになっていた。
7月から始まった本格的な練習に、文也君はほとんど参加できなかった。7月上旬の約1週間、病気で学校を休んでいたうえ、再び登校を始めた後も欠席中の課題をこなさなければならなかったからだ。
文也君は事故の当日、灯油でべたべたのトーチに気づいていたが、そのまま握って練習に参加した。音楽に合わせて、トーチを振り回し始めて30秒もたたないうちに、火が服に燃え移り、右の手首内側からひじにかけてやけどを負った。病院へ駆けつけた加奈子さんも、目を覆うほど悲惨な状態だったという。
(撮影:穐吉洋子)
治療を終えて学校に戻ると、文也君は、教諭たちから心配の声を掛けられることもなかった。それどころか、「自業自得だ」「バチが当たった」などとののしられた。火が怖くなった文也君が本番への参加を断ると、教諭から「甘えるのか。当日できなかったら、みんながやっている中、突っ立ってろ」と一喝されたという。結局、練習を重ねてきた同級生に迷惑をかけたくない思いで、文也君は本番の野外活動に参加した。トーチが始まると、最前列に座っての見学を強いられた。そのショックから、帰宅後は部屋に閉じこもりがちになった。
事故が報道で明るみになると、同級生からスマートフォンにニュース動画がいくつも送り付けられ、ますます人前に出ることが怖くなったという。
加奈子さんは振り返る。
「事故直後は、手の痛みに気を取られていたんですけど、(野外活動から)帰ってきて、だんだんおかしくなって、外に出るのをすごく嫌がるようになりました。真夏なのに長そでを着て、外に出るときはフードをかぶって顔を見えなくして。部屋に引きこもるし、ご飯も食べないし」
文也君は、2学期から不登校になった。事故が広く知られたことを受け、校長が自宅へ謝罪に訪れたが、事故原因などについては、おざなりな説明が続いた。
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この記事は<学校行事の大ケガを「自業自得と罵る教員のなぜ」 生徒は周囲から誹謗中傷を受けてPTSDに>の前半部分です。2021年6月14日、東洋経済オンライン上で公開しました。
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学校行事の大ケガを「自業自得と罵る教員」のなぜ 生徒は周囲から誹謗中傷を受けてPTSDに
学校現場が事実や原因の解明に及び腰なのは、いじめ問題に限ったことではありません。学校で起きた事故についても同様です。フロントラインプレスの林和さんは、学校行事などでケガを負った生徒と保護者の声を取材する中で、事故の検証に無責任ともいえる学校側の姿勢に疑問を抱きました。
記事は2回にわたり東洋経済オンライン上で発表されました。もう1本の記事も同サイトで読むことができます。下記のリンクからアクセスしてください。
はびこる不誠実対応「学校での事故」の悲痛な実態