香港の民主派メディア“壊滅” 中国の言論弾圧、とどまることなく

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◆「安全に仕事できない」「何が違法に問わわれるのかわからない」

 香港のネットメディア「衆新聞」が新年早々、ニュース配信を停止した。香港では昨年6月に中国共産党に批判的な「リンゴ日報(アップル・デイリー)」が廃刊に追い込まれ、年末には民主派のネットメディア「立場新聞(スタンド・ニュース)」も配信停止となったばかり。当局は、香港国家安全維持法に基づいて報道機関への資産凍結や幹部の逮捕を続けてきた。衆新聞の廃刊で、民主派メディアはほぼ壊滅状態となった。

 各報道によると、衆新聞は2017年元日に創業。主要メディアを離れたベテラン記者ら約10人が集まり、調査報道やインタビュー、評論などを手掛けてきた。とくに、調査報道による当局批判は読者の高い支持を得ていた。編集長ら幹部は廃刊に際し、「安全に仕事をすることができなくなった。従業員の安全のためニュース配信をあきらめざるを得ない」「何が違法に問われるのか分からなくなり、報道を続けられなくなった」などと語ったという。同紙は1月4日に活動を停止した。

配信停止を伝える衆新聞の社告

 

◆当局批判の記事に対し編集幹部7人を逮捕

 立場新聞は昨年12月29日、「香港司法当局に対する憎悪を扇動する出版物の発行を計画した」などとして、会社や編集幹部の自宅などが当局の家宅捜索を受け、幹部7人が逮捕された。その後、立場新聞は「民主と人権、自由、法治、正義などの香港の主軸となる価値を守るために尽力してきた」とする声明を発表し、活動を終えた。

 香港では、2020年7月、最高刑を無期懲役とする香港国家安全維持法が施行され、それ以降、同法違反などを理由とするメディアへの弾圧が一気に進んだ。その結果、民主派メディアの過去記事もネット上から姿を消している。リンゴ日報のサイトは閉鎖され、立場新聞のサイトからも過去記事が消えた。衆新聞も同様の末路をたどるだろう。「新聞が自由であり、誰もがそれを読めるときは天下泰平である」「新聞なき政府か、政府なき新聞か。どちらかの選択を迫られたなら、私はためらいもなく後者を選ぶであろう」という有名な言葉は、米国の第3代大統領・ジェファーソンものだ。今年はイギリス領だった香港の返還から25年。その節目の年に、香港社会はジェファーソンの生きた18〜19世紀の世界にまで戻るのか。

立場新聞のサイト。過去の報道は一切、消されている

 

『香港 ネットメディア「衆新聞」運営停止を発表 民主派ほぼ消滅』(NHK NEWS WEB、2022年1月3日)
『衆新聞』(公式HP)
『立場新聞』(公式HP)

 
   
 

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