【スクープ】問われる「中立公正」県議会自民党から千葉日報社へ政務活動費が毎年4000万円超 新聞社が広報業務

  1. オリジナル記事

◆新聞社の仕事は「議会リポート」作成やHPの更新など

 広報費として政党・議員から新聞社に渡った資金は何に使われていたのか。

 2020年度分を政務活動出納簿などで調べると、県議会自民党の広報費約1730万円の内訳は、自民党県議による議会リポートの制作・発行補助費として1550万円、県議会自民党のホームページ「ちば自民党」の更新費として年間約180万円だった。また、自民党県議の計30人から千葉日報社社に支払われた約3000万円については、大半が議会リポートの作成・印刷費だった。数人の議員は自らのHP更新業務も請け負わせていた。

 会派と議員個人が千葉日報社に発注した広報業務の一端は、「ちば自民党」のHPで確認できる。「県議会リポート」のコーナーには、自民党県議のほぼ全員が発行する新聞スタイルの議会リポートが毎月アップされている。「ちば議員会のお知らせ」のコーナーでは、定例会ごとに会派議員の代表質問や一般質問がほぼ毎月、要点をまとめた形で更新されている。

自民党千葉県議の議会リポート。「ちば自民党」のHPで公開されている

◆県議会自民党「法令上、禁止されていない」

 この問題について、県議会自民党はフロントラインプレスの取材に対し、次のように答えた。

・千葉日報社に発注した経緯について
「千葉日報社の営業もありましたし、同社が『県紙』として千葉県の事情に詳しいということからです」
・報道機関である千葉日報に発注したことについて
「法令上、禁止されることではないと認識しております」

◆千葉日報社「報道の中立性とは関係ない」

千葉日報社に対しては主に次の質問をした。

① 県議会自民党や県議との受発注の関係はいつからか
② 自民党会派と県議からの毎年の請負金額はいくらか
③ 県議会自民党からの受注は「公正中立」という報道姿勢に照らして問題ないか

千葉日報社社総務局総務部からの回答は次のような内容だった。

「弊社は県議会自民党から、県議会で質問に立った議員の発言要旨などをまとめた『県議会リポート』の制作・印刷を受注して対価を得ています。ご指摘の請負金額は、報道部門とは別の部門で請け負っているものであり、報道姿勢の中立性とは関係がなく、回答は控えさせていただきます」
「弊社が県議会自民党から受注している業務は、あくまで『印刷物』の制作・印刷であり、他の印刷物と変わりない対応となっています。製作は弊社の営業部門が受注し、外部ライターに委託しています」

◆専門家「報道機関の意義が根底から疑われる」

 メディア法やメディア倫理に詳しい青山学院大法学部の大石泰彦教授は取材に対し、次のように答えた。

 「千葉日報は存在意義が根底から疑われている事案だと自覚すべきだ。県議会の最大勢力から公費で多額の広報業務を請け負ったことについて、ジャーナリズムの看板を下ろして『権力の広報です』と自己規定するしかない。『報道部門は関わっていない』という回答は言い訳にもなっていない。『公正中立』をうたい文句に千葉県民を欺いている」

県議会自民党から千葉日報社への広報費363万円の振込受付書の写し

■千葉県議会・自民党と千葉日報社をめぐる問題では続報を予定しています。

1

2

本間誠也
 

ジャーナリスト、フリー記者。

新潟県生まれ。北海道新聞記者を経て、フリー記者に。

...
 
 
   
 

関連記事