自民党安倍派(清和政策研究会)による巨額の裏金事件に関連し、刑事責任をうやむやにしてはならないと、神戸学院大学の上脇博之教授が関係者の刑事告発を続けている。8月7日には新たに、自民党副幹事長の関芳弘・衆院議員(兵庫3区)を政治資金規正法違反(不記載と虚偽記載)の疑いで東京地検に刑事告発した。
告発の内容は、清和政策研究会の政治資金パーティー収入から2018年以降の5年間で836万円のキックバックを受け取っていたにもかかわらず、その事実を自身が代表を務める政党支部の政治資金収支報告書に記載していなかったというもの。併せて、政党支部の会計責任者ら3人も刑事告発された。
◆総額819万円の収入を報告書に記載せず、裏金に
裏金事件に関する自民党の聞き取り調査や安倍派や関氏の政党支部「自由民主党兵庫県第三選挙区支部」の政治資金収支報告書などによると、2018年以降の5年間で関氏は総額836万円を安倍派から受け取っていた。内訳は、2018年に100万円、2019年に212万円、2020年に120万円、2021年に322万円、2022年に82万円。これらの収入はいずれも収支報告書に記載されていなかった。
一方、関氏の政党支部は今年1月末、政治資金収支報告書を訂正したが、その際、上記の裏金収入を加筆しただけでなく、清和政策研究会からは別途、2019年に100万円、2021年に250万円の寄付金があったとし、これらも新たに収入として加筆した。
告発状によると、こうした訂正内容なども加味して真実の収支を計算した結果、翌年への繰越金は2018年に1億2800万円余りだったのに対し、2022年には2億5600万円余りになったとしている。この5年間で1億2800万円も膨らんだ計算だ。
◆「(未記載の裏金は)一切使用せず、保管していた」と関氏
神戸新聞の今年1月末の報道によると、関氏はキックバックについて「秘書から聞いたことはあるが、(収入は政治資金収支報告書に記載しなければ法律違反になるという)違法性は認識していなかった」と語っている。さらに、裏金については「一切使用せず保管していた」としている。
同時期に訂正された政治資金収支報告書は、その説明の通り、収入は増額訂正されているが、支出の訂正はなかった。そのため、翌年度への繰越金が年々増加する内容になっている。
これに対し、上脇教授は次のように指摘している。
「不記載にしていた寄附金については、全額使わずに翌年に繰り越されている。関氏の選挙区支部以外にも同じように全額繰り越している“裏金受領議員”の選挙区支部や資金管理団体がたくさんある。裏金を全く使わずに全額繰り越してきたというのは、本当とは思えない。私はこの繰越額の記載を政治資金規正法の虚偽記入罪で告発してきたが、東京地検はこの点について捜査を尽くして真相を明らかにし、刑事事件として立件してほしい」
「収支報告書の訂正は規正法違反の“自白”。関氏の選挙区支部の収支報告書の訂正を見ると、5年間で安倍派からのキックバックの不記載額836万円の他に、計355万円の寄付金収入の不記載があった。合計すると1191万円。公訴時効が完成している2018年の100万円を除き、キックバック以外の寄附金収入の不記載も含めて刑事告発しました」
◆収支報告書の虚偽記載、不記載は「禁錮5年以下」の罰則
政治資金規正法の規定では、収支報告書の不記載や虚偽記載は「禁錮5年以下、罰金100万円以下」という刑罰があり、公民権も5年間停止される。本来は、選挙管理委員会に報告書の訂正を申し出て、数字を変更すればそれですべて許されるというものではない。
関氏は関西学院大学を卒業後、住友銀行(現・三井住友銀行)に就職。2005年の衆院選で初当選した。経済産業副大臣や環境副大臣などを歴任した。自身のホームページでは、基本理念として「日本の国家を強くする」と掲げ、その理念達成のために「さあ、日本のみなさま、共に頑張って参りましょう」と呼びかけている。