千葉県議会でも疑問の声続々 自民党が政務活動費で千葉日報社に広報業務を発注【続報】

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◆「どうして表面化しないか疑問だった」「正常ではない」と他会派

 「どうして問題が表面化しないのか、ずっと疑問に思っていた」「以前から、うすうすは知っていた。正常ではない」―。日本新聞協会に加盟する千葉日報社が千葉県議会自民党と自民党県議から政務活動費で広報業務を請け負っていた問題で、他の主要会派からはフロントラインプレスの取材にそんなコメントが寄せられた。いずれも、報道機関と議会会派が政務活動費を介して受発注の関係を築いてよいのかという疑問だった。

 フロントラインプレスの取材では、千葉県議会の最大会派「自由民主党千葉県議会議員会」(県議会自民党)は少なくとも2017年度から20年度までの4年間、政務活動費から広報費として年平均1500万円以上を千葉日報社に支出していた。これとは別に、自民党県議は同じ期間、政務活動の広報費として年2500万円以上を同社に支払っていた。広報費の内訳は県議会の定例会ごとの議会リポートの制作・発行に加え、県議会自民党や自民党県議のHPの更新作業とされている。

◆「記者クラブにいる全国紙記者は最大会派と地元紙に遠慮しているのか」

 政務活動費を仲立ちにした県議会自民党と千葉日報社との関係について、他の主要会派の議員はどう考えているのか。ある会派の議員は「会派から発言の承諾を得ていない」ためとして匿名を条件に取材に応じ、次のように話した。

 自民党の広報業務を千葉日報が請け負っていることに自分が気付いたのは7、8年前だから、それより前から行われていたはず。どうして表面化しないのか、ずっと疑問に思っていた。記者クラブにいる全国紙の記者は、仲間である千葉日報と最大会派・自民党に遠慮しているのかと思っていた。

 維新がトップの大阪府と読売新聞が包括連携協定を結んだことがメディアで問題視されたけど、県議会自民党と千葉日報の関係はそれ以上の問題だと思う。千葉日報は県政について自民党主体のことしか書いていない。広報費の受発注の関係が一つの要因ではないかと疑われても仕方がない。

 

◆「議員はメディアとケンカしたくないから、誰も声を上げない」

 別の会派の議員は「メディアを敵にしたくない」との理由で、こちらも匿名を条件に取材に応じた。その中でこの議員は次のように話した。

 自民党と千葉日報の広報業務の関係について、以前からうすうすは知っていた。議員はメディアとケンカしたくないから、知ってはいても誰も声はあげない。正常な関係とは思わないが、地方紙はどこもそんなものなんじゃないの? 千葉日報は(県政の報道について)全体的に自民党にいくぶん傾いているな、という印象だ。

 さらに別の会派の議員は「そのような話は初めて聞いた。あなた(記者)の言うことを実際に確認した上でないとコメントはできない。本当だとしたら問題だし、早速調べてみる」と話した。

 

 千葉日報社は日本新聞協会に加盟する報道機関で、日刊の「千葉日報」は約14万5000部。県内全域に13支局を置き、取材活動を続けている。同社はHPで「千葉日報は1957年1月の創刊以来、一貫して公正中立で地域密着の報道姿勢を続けて県民の皆さんの知る権利にこたえながら、地域社会とともに歩んでいます」と記し、「公正中立」を報道の基本姿勢として掲げている。

■関連
『【スクープ】問われる「中立公正」県議会自民党から千葉日報社へ政務活動費が毎年4000万円超 新聞社が広報業務』(フロントラインプレス 2022年2月7日)
『兵庫県議「号泣会見」につながった地道な資料読み 「政務活動費」不正に関する報道』(フロントラインプレス 調査報道アーカイブスNo.41)
『議員14人ものドミノ辞職はなぜ起きたか?/保守王国・富山で地元メディアが対峙した地方権力』(フロントラインプレス 調査報道アーカイブスNo.69)

※千葉県議会・自民党と千葉日報社をめぐる問題では、引き続き、報道を予定しています。

本間誠也
 

ジャーナリスト、フリー記者。

新潟県生まれ。北海道新聞記者を経て、フリー記者に。

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