参院選(7月10日投票)が始まり、各政党が支持を訴えて選挙活動が本格化している。この選挙が始まる前、国会議員の「文書通信交通滞在費」(文通費)をめぐる問題が、社会を賑わしていたことをご記憶だろうか。
昨年10月の衆院選後、たった1日の任期で月額100万円の満額が支払われたことに疑問の声が上がり、支出の在り方も含めて議論になった。その後、今年4月15日に国会法と歳費法の改正案が可決され、文通費の見直しが成った。支払いは「月払い」から「日割り」になり、名称も「調査研究広報滞在費」に代わった。しかし、使途の公開は先送りされるなど、「第2の議員歳費」と言われる現状が改革されたとは言い難い。
フロントラインプレスは、参院選に向けて主な政党に質問状を送り、この問題をどうとらえるかを調査した。回答があったのは、公明党、立憲民主党、日本維新の会、国民民主党、共産党。自由民主党からの回答はなかった。ただし、立憲民主党、日本維新の会、国民民主党は、個別の質問には回答せず、文章による一括回答だった。
以下、内容をお伝えする。
【質問内容】
(問1)「文通費」がこれまでの月割り支給から日割り支給(衆院解散時、死亡時は除く)になりました。この日割りに賛成でしょうか。反対でしょうか。また、その理由も教えて下さい。
(問2)「調査研究広報滞在費」と名称が変更になり、以前は「公の性質」を有するものに限定されていましたが、「国政に関する調査研究およびその広報、国民との交流、滞在等の議員活動を行うため」と使途が以前よりも拡大される懸念があります。このことについて御党の賛否を教えて下さい。また、その理由も教えて下さい。
(問3)「文通費」の使途公開については4月の法改正では見送られました。「文通費」の使途公開についての賛否を教えて下さい。また、その理由も教えて下さい。
(問4)「文通費」の後払い制の導入についても御党の賛否についても教えて下さい。また、その理由も教えて下さい。
(問5)現在、協議されている「文通費」の改革について、現時点(回答日)の御党の賛否について教えて下さい。その理由についても教えて下さい。
【公明党】
■問1への回答 賛成し、推進した立場です 。「文通費」の日割り支給については、もともと2010年の参院選後、6日の勤務に対して歳費、文通費が満額支給された事を受け、わが党が主導して歳費の日割り化を進める中で、文通費についても、公明党のみが主張したものの、当時は他党の理解を得られず、合意形成できなかった経緯があります。今回、ひとつ目の課題であった日割り化が、公明党を含む各党の合意により実現できたことは歓迎すべきことだと考えています。
■問2への回答 賛成の立場です。可決成立した改正法では、調査研究広報滞在費の目的について「国政に関する調査研究や広報、国民との交流、滞在などの議員活動を行うため」としております。今回の各党協議会の中で、制度の成り立ちに関して確認しあい、時代変化の中で使用実態と名称との間に乖離が生じていたため、趣旨・趣旨・目的に沿った名称に改めた経緯があります。そもそも今までは、使途について事実上ルールは存在しませんでした。全く関係のない支出に充てられることのないよう、そこにルールを定めようとする趣旨の名称変更であり、名称変更で使途が限定はされても、拡大に繋がること事はありません。さらに、その使途の範囲についてはまさにこれから本格的な協議に入る予定です。次回の各党協議会に向け、各党が目的に照らして使途として認められないものが何なのか、ネガティブリストを持ち寄り、協議する予定となっております。
■問3への回答 賛成・推進の立場です。「使途の公開」について、どういった形で公開するか、あるいはどこまで公開するのか、整理して議論する必要があります。たとえば、政党支部に寄付したという旨の公表をもって、果たして使途の公開と呼べるのかどうか。そうした点も議論を尽くす必要があると考えていますと考えています。いずれにせよ、今国会中に国会中に決着を図るべきであると考えています。
■問4への回答 党内で検討をしています。後払い制(実費精算)は明瞭である一方、事実上、手持ち資金を十分に有する者のみに議員資格が限定されてしまう恐れがあるといった課題も指摘されています。後払い制の有無にかかわらず、その前に使途の範囲を定める必要がありますので、まずは各党協議会で定めた「使途の範囲」「使途の公開」「未使用分の返還」などの議論を進めて今国会中に結論を出し、その後、その他の課題を改めて洗い出していくべきであると考えています。
■問5への回答「文通費」改革の議論は、在職1日の議員にも満額100万円が支給されたことに対する国民の違和感から出発しました。今後協議が本格化する「使途の範囲」について、制度の趣旨を踏まえ協議が本格化する「使途の範囲」について、制度の趣旨を踏まえて明確にし、さらには「使途の公開」と「未使用分の返還」も可能にして、原資たる税金の拠出者である国民の皆さまに納得していたける決着を、各党の合意のもとわが党が先導していきたいと考えています。
【日本維新の会】
この度いただきましたご質問状に対し、以下の通り回答申し上げます。
「文通費」につきましては、我が党は、かねてより、①日割り、②使途公開、③残額返金の3点セットを一貫して主張し、法案を提出しているところです。この3点セットについて今国会内に成立させる合意があることを前提に、名称変更等は条件付きで賛成している次第です。引き続き、3点セットでの改革、特に使途公開が行われるよう、他会派に求めてまいる所存です。(幹事長 藤田文武)
【国民民主党】
いただいた質問状について、回答いたします。
日割支給については在職日数に応じた支給とすることが適正であると考えます。使途については、 法の趣旨に則り、公的な性質を有する使途に使用を限定するものとし、私的な使途への使用は認めるべきではないと考えます。説明責任等の観点から使途の公開を行うべきものと考え、法案を提出し、成立を求めています。当該法案が成立しなくても、説明責任が求められることに変わりはないため、党として、独自のルールを定め、使途を翌年に公開する準備を進めています。(幹事長 榛葉賀津也)
【日本共産党】
■質問①について 当選、辞職などで、その月の議員の在職日数が数日でも、一か月分の文通費を支給することは、国民の理解を得られない不合理なものであり、日割り支給の法改正は当然の措置であり、賛成です。
■質問②について 今回の文通費の名称及び目的の変更に関する改正には同意できず、反対しました。
文通費の名称及び目的は、文通費の使途と不可分のものです。使途や公開の在り方の議論に先んじて、名称と目的を変更することは順序が逆です。しかも新たな名称と目的の表記は、1966年の「議員歳費等に関する調査会答申」の文言に依拠したと説明されていますが、当時と今日では議員活動をめぐる環境は大きく変化しており、答申が根拠とした文通費の実態とは乖離があります。
また「滞在」という名目については、1993年当時、「東京滞在への助成」として唐突に持ち出されたもので、わが党は、在京議員に対しても「東京滞在」費を支給することは、国民から見て合理的説明がつかないとして反対し、以来、国会予算審議の際に、繰り返し見直しを求めてきました。この見直しの議論もないまま、名称と目的に「滞在」を残すことは首肯できません。
■質問③④について 文通費の使途公開に賛成です。党議員団としては、独自のやり方で公開しています。国会の各党協議会では、文通費の使途、公開、国庫返納のルールについて議論が行われています。今国会で実施に向けた結論を出すことを求めていきます。「後払い制」などの方法も協議の中で検討したいと考えます。
■質問⑤について 文通費は、国民の代表である国会議員の活動を支えて行政監視機能を果たし、議会制民主主義を支える上で必要な経費です。原資は税金ですから、国民の理解が必要です。国民の理解が得られるルールづくりに努力したいと考えます。
【立憲民主党】
早速ですが、ご依頼の頂きましたアンケートについて、
以下のとおりご回答いたしますので、宜しくお願い申し上げます。
『昨年提出した法案に基づき、協議会にて協議中』
※ご参考
https://cdp-japan.jp/news/20211207_2675