官製ワーキングプアの真実【下】 「悔しかったら正規になってみろ」と言われて

  1. オリジナル記事

「はむねっと」代表・渡辺百合子さん (シリーズ・令和に生きる No.5)

■新たに導入された「会計年度任用職員」の実態とは?

 地方自治体で勤務する臨時や非常勤の職員について、そのほぼすべてを「会計年度任用職員」として扱う新制度が2020年4月から導入された。あいまいだった立場を明確にするとともに、フルタイム勤務の非正規にはボーナスと退職金を、パートにもボーナスを支給して待遇改善につなげる狙いとされた。非正規職員の待遇は改善されたのだろうか。
 急速に増えてきた公務職場の非正規たち。とくに女性は“使い捨て”にされていく。公務非正規女性全国ネットワーク(通称・はむねっと)代表の渡辺百合子さんに聞くインタビュー、その後編。

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◆「やっぱり、役所にとって都合のいい制度でした」

 建前上は、待遇改善となってますが、この制度が施行される前から「おかしいぞ」という声はあったんです。実際、運用されてみたら、やっぱり役所の都合のいいように人件費削減ができるような制度設計になっていました。「パートにすれば退職金を払わなくていいから」ということで、多くの方がフルタイム勤務からパートにさせられました。総務省の調査でもフルタイムが大幅に減っています。正規の職員の勤務時間は朝8時半から夕方5時15分までの昼食休憩を抜いた7時間45分ですが、そこから少しでも短いとパート勤務の扱いにできるんです。だから、「あなたの出勤は朝9時からでいいから」って。今までそういう働き方をしてたんならまだ許せますが、元々フルタイムで働いていた人にそんなこと言って……。

 ボーナスについてもおかしいんです。役所はもともと非正規として採用する際、「ボーナスは払いません」という契約書を交わして働かせてたんです。新制度になったら「今までの給料にはボーナス分が含まれていたから」って言って、毎月の給料を下げられたって言う声はかなりの方から上がっています。ひどいんですよ。新しい制度で給料も年収も減ったって方、調査の追加分析では118人(14.4%)もいました。何が待遇改善かって。低賃金の非正規の給料を削らなくてもいいだろうと。

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◆「年明けがつらい」という非正規が多い理由

 会計年度任用職員制度の実施によって、非正規職員については1年ごとの採用や更新が厳格化された。その弊害を訴える声も少なくない。

 新制度の前は1年間勤務したら自動延長という形で、割と緩い感じで非正規の契約は更新されてたんです。でも、(新制度で)更新が厳しくなってしまって、10年以上働いてきたのに落とされた人もいます。納得できなくて、(裁判に)訴えた方や訴えようとしている方もいます。腹が立つっていうか、納得できないからって。結局、役所にとって都合いい人だけ更新して、経験があって物を言う人を落とすための手段にされちゃったのかなって。新制度は役所にとって雇い止めするための言い訳として便利でしょうね。「1年経ったから任用もう終わりです」って。本当に、首を切りやすくなったっていうのはあると思います。

 だから、更新時期が近づくと、精神的に不安定になる方は非常に多いです。うちのメンバーの中にも「年明けからはつらい」って言う人が多いです。「どうなるか、分かんないから」って。相談員などの専門職の方からは、「1年ごとに評価するって言うけど、正規の職員に私たちのことを評価できる訳がない」って声も聞きます。そうした方たちは一般職の正規職員より仕事を知ってますから。正規の人は3年ごとに職場を異動しちゃう訳だから。そういった実態を無視して、雇う側を便利にするため、雇い止めしやすくするために制度を導入したのかって勘繰りたくなるくらいです。

  また、アンケートと追加のインタビューでびっくりしたのは、正規の職員の減少で、非正規の方が本来業務ではない災害対応や選挙事務とか、国勢調査とかに「(会計年度)任用職員になったんだから、出てください」って言われるようになったって。「任用制度になったんだから」って。断ると、契約更新の時にどうなるかと思うと、『私の仕事じゃないですよね』って言えないって。

「はむねっと」の活動の様子(提供写真)

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本間誠也
 

ジャーナリスト、フリー記者。

新潟県生まれ。北海道新聞記者を経て、フリー記者に。

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