懲戒30人、訓告197人 警視庁の“非違行為” 情報公開請求で2020年の実態を取材

  1. オリジナル記事

 犯罪を取り締まる警察官には、一般市民よりも厳格な法の遵守と情報の公開が求められる。では、首都・東京の治安を守る警視庁の警察職員はコロナ禍の2020年、どのような行為によって懲戒処分や訓告処分を受けたのか。フロントラインプレスが情報公開請求によって調べたところ、法律に基づく懲戒処分は延べ30人(うち免職3人)、内規に基づく訓告(訓戒・注意)は延べ197人に達していたことがわかった。

◆警察の中の警察、「ヒトイチ」の巡査部長は窃盗で免職

 国家公務員法・地方公務員法に基づく懲戒処分には、重い順に「免職」「停職」「減給」「戒告」の4種類がある。懲戒処分には至らない軽い処分として訓告があり、「訓戒」「注意」などの措置を講じている。開示された文書によると、懲戒処分を受けた30人の内訳は、免職が3人、停職が4人、減給が22人、戒告が1人だった。

懲戒処分に関する開示書類

 

 免職と停職の計7人はどのような非違行為を犯したのだろうか。

 免職の1人目は荒川署に勤務していた20代の男性巡査長で、職務質問などの際に「DNAを採取する」「飲酒しているか検査する」と嘘を言って、自分の性欲を満たすために女性の口の中に市販の綿棒を入れるなどしていた。特別公務員暴行陵虐の疑いで昨年1月、書類送検された。巡査長は2018年9月の着任以降、計16人の若い女性に同様の行為を繰り返していたと供述していたという。外国籍の女性を特に狙っていたといい、不審に思った中国人の女性が警察署に相談して犯行が発覚した。

 2人目は本庁人事1課監察係の20代の巡査部長。昨年2月4日午後10時50分ごろ、東京都府中市内の路上で、同市内在住の70代の女性の背後から自転車で近付き、現金約4万円が入ったバッグをひったくったとして、窃盗容疑で逮捕された。パチンコなどで借金を抱えていたとされる。本庁の人事1課監察係は、警視庁内部での不正や犯罪に目を光らせる部署。別名「ヒトイチ」とも呼ばれ、作家・濱嘉之氏の人気シリーズのタイトルになったこともある。犯罪を取り締まる側の、さらに内部の“組織内警察”に所属していた者の犯罪だった。

 3人目は捜査1課の40代の警部補で、2015年から昨年2月にかけ、通勤の電車代や私的な駐車場代などを捜査費として57回にわたって申請し、13万1385円をだまし取ったとされる。虚偽有印公文書作成と詐欺の疑いで書類送検された。警察手帳を示して不正乗車したこともあったという。

◆停職は4人 捜査記録を偽造しても免職にならず

 停職となった4人の内容を見てみよう。

 停職3カ月の処分を受けた本庁勤務の巡査長はストーカー行為を繰り返していたとされる。警視庁はこの事案について「懲戒処分の発表の指針」の例外規定に当たるとして公表していなかった。(フロントラインプレスが既報)

 停職1カ月の大崎署の60代の警部補は、2017年から19年にかけて交通事故捜査の書類に嘘の内容を記載したとして、虚偽有印公文書作成・同行使の疑いで書類送検された。捜査を怠けていたことが上司にばれるのを恐れて犯行に及んだとされる。警部補は依願退職している。

 3人目は、停職3カ月の処分を受けた第3方面交通機動隊で白バイ隊員の30代の男性巡査長。昨年6月9日未明、埼玉県杉戸町の住宅から自転車を盗んだとして窃盗の疑いで書類送検された。東京都内で飲酒後に電車で寝過ごして杉戸町で下車し、盗んだ自転車で茨城県つくばみらい市の自宅に向かう途中、職務質問を受けて発覚した。巡査長は依願退職している。

 停職処分の4人目は第六機動隊の20代の巡査で、停職1カ月。2020年3月から10月までの間、同僚7人財布から現金約9万3000円を抜き取った。巡査は現金を返済し、被害届も出ていないことから、警視庁は窃盗事件としての立件は見送った。

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本間誠也
 

ジャーナリスト、フリー記者。

新潟県生まれ。北海道新聞記者を経て、フリー記者に。

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