ゲイコンテスト 出場者たちの“日常”―「他者を救うことが自分を救う」

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ゲイコンテスト 出場者たちの“日常”―「他者を救うことが自分を救う」(2019・6・10 Yahoo!ニュース特集)

 ゲイコンテスト「ミスター・ゲイ・ジャパン2019」がこの春、昨年に続いて東京で開かれた。LGBTなど性的少数者への理解を促すための試みだ。カミングアウトするかどうかで多くの性的少数者が悩むなか、出場者たちは「隠れていては何も変わらない」と考え、等身大の自分をさらけだそうとした。その勇気をたたえられると同時に批判や中傷にもさらされる。そうしたなかで模索する「誰もが生きやすい社会」とはどんな姿なのだろう? 彼らの「日常」を追うと—。

ゲイコンテストでの1コマ(撮影:穐吉洋子)

◆セクシュアリティーを学ぶ新しい科目

 東京都豊島区にある小中高一貫の私立学校を訪ねた。教室に入ると、色画用紙が張り巡らされている。国語教諭のSHOGO(ショウゴ)さん(34)は、楕円形のテーブルを前に腰を下ろした。
「視線が生徒と同じ高さになるように努めています。前に立って話すようなことはあまりないかな」
昨年、日本で初開催されたゲイコンテスト。SHOGOさんはその優勝者であり、初代のミスター・ゲイ・ジャパンだ。コンテストが重視するスピーチでは、性教育の大切さを訴えたという。氾濫する性情報に対して、無防備な子どもたちの状況を危うく思っているからだ。

 この春には、高校生対象の選択科目「セクシュアル・スタディ」も立ち上げた。「特定のグループがなぜ不平等を経験する可能性があるのかを説明でき、不平等をなくす方法を提案できる」ことが到達目標で、現在13人が受講している。
「最初の授業で生徒を(意図的に)混乱させたんですよ」とSHOGOさんは言う。
LGBTの「L」について問うと、「女を好きになる女の人」という答えが返ってきた。「お互いが好きな2人組がいたらレズビアンと何が違うの?」と逆に聞いた。「同性愛者の見分け方は?」に対しては「異性愛者はどう見分ける?」と切り返す。そうやって、生徒たちにはまず、自分の内にある無自覚なマジョリティーの視点に気付いてもらうのだという。
やがて、生徒たちは自ら次々と問いを発した。
「セックスのない関係は恋愛と言える?」
「じゃあ、セックスレスの夫婦は破綻していることになるの?」
「ならないなら、セックスは恋愛に関係なくない?」
固定観念を突き崩す質問の連続。生徒からは「ゲイの人から好きだと告白されたらどう対応すればいいの」という切実な質問も出た。カミングアウトの難しさ、他人の秘密を暴露するアウティングの問題……。テーマは尽きなかった。
SHOGOさんは「ミスターゲイ」になった後、HIV検査についての情報発信や在日外国人の居場所づくりに携わっている。「ダブルマイノリティー」と呼ばれる、精神疾患などを抱える性的少数者の「生きづらさ」も学んだ。支援者や当事者と知り合う機会の少なさに悩む地方在住者の相談にも乗っている。
「ミスターゲイは無期限のコミュニティーワークなんです。一方的に『僕らを理解して、理解して』ではわがまま。身近にいる、困っている人を支えてこそ相互理解が進むと思います」

SHOGOさん(撮影:穐吉洋子)

◆「日本にはなぜコンテストがない?」

 「ミスター・ゲイ・ジャパン2019」はこの3月31日に開かれ、優勝者は日本代表として「ミスター・ゲイ・ワールド2019」に派遣された。
世界大会の初開催は、2009 年のカナダだった。その後、これまでに60以上の国や地域が参加しているという。11回目の今年は4月下旬〜5月上旬に南アフリカ共和国・ケープタウンで開かれ、日本を含め22カ国・地域の代表が出場。ファッションショーや撮影会のほか、各国の実態や課題も学んだという。優勝は、41歳のフィリピン代表だった。
日本での開催をリードしてきたのは、市川穣嗣さん(36)たちだ。デザイナーとしてロンドンのファッション業界などで働いてきた市川さんは、ミスター・ゲイ・ジャパン事務局の「クリエイティブ・ディレクター」でもある。
「海外で見聞きしていたゲイコンテストのことを、日本では耳にしない。どうしてだろう、と。世界大会の事務局に連絡したら、すぐ、カナダや台湾などのプロデューサーから日本の参加を求める熱烈なメールが相次いで送られてくるようになったんです」
ロンドンでは、LGBTの著名人たちが慈善事業に携わるなどして自らの功績を社会に還元する姿を見続けた。
その後に住んだフィリピンのセブ島では、2013年に地震と台風被害に見舞われ、炊き出しや土木作業に尽力した。そして、15年ぶりに日本に帰国すると、LGBT当事者たちを取り巻く環境も変わりつつあったという。
「自分もゲイとして、『同性婚を認めないような国』を見過ごしていられない、と。エンターテインメントでも、政治活動でもないコンテストという方法なら、無関心層を味方につけられるのではないか、とも思いました。日本でもやるしかない、と勢いづいたんです」

 今年のコンテストでは思いがけない展開があった。
「あなたのいない人生は考えられない。ウィル・ユー・マリー・ミー?」
遠距離恋愛を続けていたオーストラリア人の彼に、SHOGOさんがステージでひざまずいてプロポーズしたのだ。昨年は優勝者、今年は審査員。SHOGOさんには、これ以上ないプロポーズの場だった。

自分らしく生きるとは…(撮影:穐吉洋子)

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 この記事は「ゲイコンテスト 出場者たちの“日常”―『他者を救うことが自分を救う』」の前半部分です。2019年6月10日に公開されました。取材・執筆はフロントラインプレスのメンバー、穐吉洋子さん。全文はYahoo!ニュースオリジナル特集で読むことができます。穐吉さんはカメラマンでもあり、記事には表情豊かな人々の写真が多数収録されています。
下記のリンクからアクセスしてください。Yahoo!へのログインが必要になることもあります。Yahoo!で公開されている記事とは、写真の配置などが異なっています。
ゲイコンテスト 出場者たちの“日常”―「他者を救うことが自分を救う」

 LGBTの問題はここ数年、急速にクローズアップされてきました。LGBTの人たちが置かれた環境―周囲の無理解や社会的差別などは、喫緊に克服すべき社会課題であり、「ダイバーシティ」の核となるものだとフロントラインプレスは考えています。

穐吉洋子
 

カメラマン、ジャーナリスト。

大分県出身。 北海道新聞写真記者を経て、ウェブメディアを中心に記事、写真を発表している。

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