小さな違和感が端緒だった「桜を見る会」のスクープ

  1. 調査報道アーカイブズ

◆赤旗の「これがスクープだ!」

 桜を見る会は内閣府の公式行事だ。第2次安倍政権発足後、参加人数と支出は増え続けた。2014年度は約1万4千人で約3000万円だったのに、5年後の19年度は1万8千人超で約5500万円に膨らんだ。とはいえ、これらの事実は国会で共産党議員がそれまでも追及してきたことだ。それがなぜ、調査報道のスクープとして実っていったのか。赤旗日曜版の山本豊彦編集長は「月刊日本」(2021年2月号)で「文春砲」を牽引する新谷学・週刊文春編集局長と誌上で対談。「これがスクープだ!」と題する記事の中で、そのあたりのいきさつを大意、次のように語っている。

 

「月刊日本」2021年2月号でのインタビュー記事

 

 スクープを取る上で重要なことは違和感を持つことだと思います。いろんな新聞社の人から「赤旗さんはなんでスクープをとれたんですか」と聞かれました。それは私たちが桜を見る会に違和感を持ったからです。功績・功労があった人たちを招く場であるはずなのに、首相のお友だちや後援会員がたくさん参加している。これは何かあるのではないか。そうした違和感を持ち、その背景を掘り下げ、安倍政権による国政の私物化という視点を持てたことで一連のスクープが生まれたのです。

 もちろん一般紙の記者たちも桜を見る会の現場を取材しているわけだから、違和感を覚える瞬間はあったはずです。だけど、彼らはおそらく上司などから「現場の雰囲気を見てこい」とか、「首相の発言を記事にしろ」とか言われ、流れ作業のように取材していたんだと思います。だから違和感を持ったとしても、それを深めることができなかったのだと思います。

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本間誠也
 

ジャーナリスト、フリー記者。

新潟県生まれ。北海道新聞記者を経て、フリー記者に。

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