懲戒処分「停職3カ月」を公表せず 警視庁巡査長がストーカー 「指針」に反し、隠ぺい?

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◆「やむを得ない場合は公表しない」と警視庁

 警察職員が国家公務員法や地方公務員法に基づいて懲戒処分を受けた場合、都道府県警察は「懲戒処分の発表の指針」に則って事案を公表することになっている。「発表の指針」は、1999年から2000年にかけて警察の不祥事が相次いだことから、警察庁が「警察行政の透明性の確保と自浄機能の強化」を目指し、2001年に都道府県警察へ通達された。

 法律に基づく公務員の懲戒処分は重い順に「免職」「停職」「減給」「戒告」の4種類ある。「指針」によると、警察が発表する懲戒処分は(1)職務執行上の行為及びこれに関連する行為に係る懲戒処分(2)私的な行為に係る懲戒処分のうち停職以上の処分―などとなっている。したがって、職務執行上の行為であれ、私的な行為であれ、停職以上はすべて発表しなければいけない。

警察庁が通達した「発表の指針」

 

 ところが、警視庁はこの事案を発表しなかった。同庁人事一課の担当職員は、フロントラインプレスの取材に対し、「『発表の指針』には例外規定として、『被害者その他関係者のプライバシーその他の権利利益を保護するためやむを得ない場合は、発表を行わない』とあり、それに該当するということ」と説明した。

 確かに「発表の指針」には例外規定はある。だが、このストーカー事案に関する停職処分が発令された2020年1月17日の前後、警視庁は例えば、2019年12月中旬と2020年1月下旬などにストーカー規制法違反容疑で一般人を逮捕した事案を報道発表している。停職処分を受けた「巡査長」がその後、書類送検されたかどうかなどは不明だが、“身内”と一般人による行為との比較で、逮捕・不逮捕や事案公表が二重基準になっていないだろうか。

 また、警視庁の警察官による過去のストーカー事案としては、2007年8月に立川署の巡査長がストーカー行為の果てに32歳の女性を拳銃で殺害する事件が起きている。

◆識者「警察庁の指針に反して発表しないのは意味不明」

 「発表の指針」を制定した目的は「警察行政の透明化」だった。これに反するような警視庁の対応について、日本体育大学の清水雅彦教授(憲法学)は「警察は時に一般人なら逮捕するケースでも、相手が警察官なら書類送検にしたり、懲戒免職相当事案なのに依願退職で済ませるなど身内に甘い傾向がある」とした上で、こう指摘した。

 「今回問題となっているストーカー事案の場合、発表の仕方や内容によっては被害者のプライバシーに影響のない方法はあろうかと思う。プライバシーの保護を理由に、警察庁の指針に反して発表しないと言うのは意味不明だ。同じ時期の一つひとつの事例と比較するなどして警察の対応について今後も指摘していくしかない」

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本間誠也
 

ジャーナリスト、フリー記者。

新潟県生まれ。北海道新聞記者を経て、フリー記者に。

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