北京冬季五輪で中国当局の“ネット監視疑惑”報道 スノーデン氏による米国政府の“大量監視”は忘れた?

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◆選手団や取材記者が私用スマホを使わず 情報抜き取りを警戒

 北京冬季オリンピックの競技が本格化し、マスコミ報道も五輪一色になってきた。そうしたさなか、北京入りしている西側の選手団が、中国当局による“監視”に警戒を強めているという。

 共同通信は2月3日に『選手ら千人が使い捨て携帯使用へ 情報抜き取り警戒、英報道』という記事を配信した。それによると、米国、英国、カナダ、スイス、スウェーデン、ドイツ、オランダの7カ国は、選手らに私用スマホを持ち込まないよう呼び掛けた。通信回線を通じた個人情報抜き取りや行動監視を警戒しているため。それに伴い、約1000人が使い捨てスマホを利用することになるだろうと伝えている。

 また、産経新聞は2月4日公開の『スマホで悩む各国記者 五輪アプリに監視疑惑」の中で、北京入りした各国の取材記者が中国当局のスマホ監視にどう対応するかで悩んでいる様子を報じている。記事によると、海外メディアのスタッフの中には個人情報の詰まった私有スマホを置いてきたり、データを消して持ってきたりした人もいる。ネット通信を使った“スパイ行為”を警戒するだけでなく、中国で開発された五輪公式アプリ「MY2022」にも疑惑の目が向けられているという。このアプリでは、コロナ対策などの一環として健康状態の報告などが求められるが、名前や住所、顔写真など多くの個人情報の登録が必須となっている。

◆米NSA職員だったスノーデン氏の告発 例外なき“大量監視”は日本にも

 もっとも、通信回線を使った監視は、中国だけのものではない。多くの人はすっかり忘れかけているが、2013年にアメリカ国家安全局(NSA)の職員だったエンジニアのエドワード・スノーデン氏が、米国政府による大量監視の実態を告発し、国際社会を大きくざわつかせたことがある。スノーデン氏の告発によると、世界の人々が日常的に使っているメールやチャット、ビデオ通話、ネットの検索履歴、携帯電話での音声通話などは、すべての記録が米国政府に掌握されている。国や人による区別ではなく、全員が情報収集の対象だ。日本も例外ではない。スノーデン氏は在日米軍基地に勤務し、日本で2年間暮らしたこともある。その経験も踏まえ、米国政府による日本での情報収集活動にも警鐘を鳴らしている。

 スノーデン氏の告発内容については、ネットでは『スノーデンの警告「僕は日本のみなさんを本気で心配しています」なぜ私たちは米国の「監視」を許すのか』(現代ビジネス)が、比較的わかりやすい。2016年公開の記事は次のように始まる。

 インターネット時代、日々めまぐるしく変わり続ける情報と状況のなかで、どれだけの人が彼を覚えているだろうか。いや、それ以前に、彼は日本でまだ十分に知られていないかもしれない。このインターネットの裏側で大規模に執り行われている監視の実態を、世界に向けて暴いた当時弱冠29歳のエンジニア。かつて2年間日本で暮らしたにもかかわらず、日本人のほとんどは彼の警告を自分の問題として感じていない――。

 記事が掲載されてからすでに6年。もはや、スノーデン氏の告発を知らない人も増えてきた。果たして監視社会は、中国だけだろうか。

『選手ら千人が使い捨て携帯使用へ 情報抜き取り警戒、英報道』(共同通信 2022年2月3日)
『スマホで悩む各国記者 五輪アプリに監視疑惑』(産経新聞 2022年2月3日)
『スノーデンの警告「僕は日本のみなさんを本気で心配しています」』(2016年8月22日)

 
   
 

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