裏金議員2人を再び刑事告発 1289万円受領の菅家一郎氏、1726万円の簗和生氏/不起訴処分を下した東京地検特捜部の判断を問題視/上脇博之・神戸学院大教授

  1. オリジナル記事

◆再び刑事告発に踏み切った理由とは?

自民党による一連の裏金問題に関連し、政治資金規正法違反容疑(不記載、虚偽記載)で東京地検に刑事告発されながら不起訴となった衆院議員の菅家一郎氏(比例東北ブロック、復活当選)、および簗和生氏(栃木3区)の2人が8月20日、同じ容疑で再び東京地検に刑事告発された。

菅家氏は2018年以降の5年間に総額1,289万円、簗氏は同時期に総額1,726万円の資金を安倍派(清和政策研究会)からそれぞれ受け取りながら、政治資金収支報告書にその事実を記載しなかった容疑で、神戸学院大学の上脇博之教授と元検事の郷原信郎弁護士に刑事告発されていた。ところが、報道などによると、東京地検特捜部は「他の裏金事件と同様、安倍派から流れた資金は政治家個人ではなく、それぞれの政治団体に向けたものだった」などと判断。政治家個人を対象とした上脇教授らの告発に対しては、「嫌疑なし」で不起訴処分にしていた。

こうしたことから、上脇教授は今回、告発対象をそれぞれの政党支部に変更。菅家氏については、同氏が代表を務める「自由民主党福島県第4選挙区支部」、簗氏につても同氏が代表を務める「自由民主党栃木県第3選挙区支部」を告発の対象とし、それらの代表者としての両議院、および、両政党支部の会計責任者ら合計6人を告発した。

東京地検特捜部が「安倍派からの裏金は、政治家個人ではなく政党支部に提供されたもの」として政治家個人を起訴しないのであれば、政党支部の資金報告書の不記載や虚偽記載について、刑事責任を問おうとしたわけだ。

◆「裏金を受け取ったのは政治家個人ではなく、政党支部でした」という弁明を許さない上脇教授

安倍派からの裏金受領については、東京地検特捜部による捜査終結後、菅家氏と簗氏は政党支部の政治資金収支報告書を訂正した。その際、菅谷氏は「この度の派閥の修正に合わせて派閥からの還付金を清和会の名義に変更する修正をしました。収入支出の総額は同額であり裏金は一切ございません」と説明。検察の判断に合わせるかのように、裏金は個人で受領したのでなく、政党支部への寄付だった、と主張を転換していた。

◆菅家一郎議員とは? 簗和生・議員とは?

菅谷(かんけ)一郎氏は福島県議会議員や会津若松市長などを経て、2012年の衆院選で初当選。前回2021年の衆院選では小選挙区で敗れたものの、比例東海ブロックで復活当選した。この間、復興副大臣、内閣府政務官などを務めた。

また、菅家氏は今年5月、派閥からの裏金を個人として政党支部に寄付する際、約148万円の所得税減税を受けていたことが明らかになっている。裏金事件に関しては自民党から「等の役職停止」という処分を受けた。一方、国会の政治倫理審査会(政倫審)への出席は拒み続けた。

国会の政治倫理審査会への出席を拒み続けた菅家一郎氏(本人のHPから)

 

簗和生(やな・かずお)氏は慶應義塾大学大学院を修了後、自民党国会議員の秘書に。2012年の衆院選で国会議員となった。文部科学副大臣などを経て、衆院の安全保障委員会委員長。自民党の裏金事件では、菅家氏と同様、自民党から「等の役職停止」という処分を受け、国会の政倫審には出席していない。

簗和生氏のHPから。簗氏も国会の政治倫理審査会に出席しなかった

 

◆上脇教授のコメントは?

菅家氏と簗氏を再び刑事告発したことについて、上脇教授は次のように述べている。

「政治資金規正法は、政党以外の者が公職の候補者である議員個人に政治活動のための寄付をすることを禁止している。そのため、安倍派が菅家、簗の両議員にキックバックとして寄付していたのは規正法違反の寄付だったとして4月に郷原弁護士と一緒に刑事告発した。しかし、東京地検特捜部は両議員らを不起訴にし、その理由が“嫌疑なし”と報道された」

「“嫌疑なし”だったとなると、安倍派からのキックバックによる寄付を受け取ったのは、各議員個人ではなく、収支報告書を訂正したそれぞれの政党支部だったことになる。それらの訂正は不記載・虚偽記入の“自白”であり、再び刑事告発した。両議員の説明にも整合性がない。各告発状には、これらの点も捜査して真相解明してほしいと明記している」

 

鈴木祐太
 

ジャーナリスト。

地方の理系大学に在学中から、被差別部落・ベトナム難民などの在日外国人の子どもたちへの支援に関わる。

小学校臨時教員、派遣社員などを経て、ネットを中心としたメディアに関わり、「政治とカネ」「子どもの貧困」などの社会問題を中心に記事を発表してい...

 
 
   
 

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