自衛隊「日報隠蔽」開示請求の過程で隠蔽を掴む

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「自衛隊日報隠蔽」報道 布施祐仁氏(2016年)

 

[ 調査報道アーカイブス No.22 ]

 自衛隊が南スーダンの国際平和維持活動(PKO)に参加していた際、派遣地の周辺で大規模な戦闘があった。そのとき、現地ではいったい何が起きていたのか。それを確かめようと、ジャーナリスト・布施祐仁氏は防衛省に対し、南スーダン派遣施設部隊の「日報(日々報告)」を情報開示請求した。ところが、回答は「文書不存在」だった。これをきっかけにして、防衛省による公文書の組織的な隠蔽が暴かれていく――。一人のジャーナリストが徹底して「文書」にこだわり、最終的には稲田朋美防衛大臣をはじめ、防衛事務次官、陸上自衛隊幕僚長らを辞任に追い込んだ。見事な調査報道だった。

 2016年7月初め、南スーダンの首都・ジュバでは政府軍と反政府勢力との戦闘が勃発し、同7日に双方はついに武力衝突した。4日後の11日夜、ようやく双方のトップがそれぞれの兵士たちに停戦命令を出したものの、南スーダン政府はこの戦闘で両軍合わせて300人以上が死亡したと発表した。

 こうしたジュバでの戦闘について、中谷元・防衛相(当時)は「両軍の間で衝突が起きていることをもって、(PKOの)参加五原則が崩れたということは考えていない」と繰り返し、撤退しないとの考えを強調していた。ジュバでは当時、約350人の陸上自衛隊の施設部隊が活動していた。

 安保関連法の成立で、自衛隊はPKOで新たに「駆け付け警護」と「宿営地の共同防護」が実行可能となった。では、南スーダンPKOはそれらの任務を付与できる状況なのか。布施氏は2016年7月中旬、ジュバでの戦闘発生以降、現地の派遣部隊と日本の司令部とのやり取りを記録したすべての文書を開示請求した。ところが9月半ばに開示された文書には現地での戦闘について何も記されていない。

 そうした中、別の開示請求で得ていた陸上自衛隊の教育資料に目を通すうち、布施氏は国際活動教育隊の教訓資料として「派遣部隊の日報等」が使われていることを知った。そこで9月末、今度は「南スーダン派遣施設隊が現地時間で2016年7月7日から12日までに作成した日報」とピンポイントで開示請求した。これが一連の取材を大きく動かすことになる。12月9日に届いた開示請求の決定通知書には、想像すらしていない文言が連なっていたのだ。

「本件開示請求に係る行政文書について存否を確認した結果、既に廃棄しており、保有していなかったことから、文書不存在につき不開示としました」

 自衛隊の海外派遣という任務の重要な記録であり、教育資料としても活用されている。そんな「日報」が、作成から半年以内に廃棄されることはあり得ない。陸自の文書管理規則ではPKOの関連文書の標準保存期間は3年間と定められてもいた。

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本間誠也
 

ジャーナリスト、フリー記者。

新潟県生まれ。北海道新聞記者を経て、フリー記者に。

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