「子育て困難社会」豊富なエピソードで得た圧倒的共感

  1. 調査報道アーカイブズ

◆ネットで読まれる社会課題の記事

 この初回には「見知らぬ土地への転勤と激務で帰らぬ夫 『アウェイ育児』に苦しむ妻」というタイトルが付されている。シリーズはその後、次のように3回続いた。

・「育児は女性のもの」が覆い隠す社会の歪み―見え始めた「母性愛神話」の限界
・母親が直面する孤立子育て―全てを抱え込んで破綻、「妻の孤独」の泥沼
・ワンオペ育児の中で「こうでなきゃ」が苦しめる “理想の母親像”の呪縛

 各回のタイトルを並べて見ると、小欄でも取り上げた「日本の幸福」シリーズの「妻たちの思秋期」を思い起こす。共同通信社の斎藤茂男氏による作品は、1980年代の妻たちを通じて、超企業社会の歪みを描いた。「子育て困難社会」シリーズも、子育てに苦闘する母親たちの姿を通じて、経済最優先社会がもたらした歪みを浮き彫りにしようとした。少子高齢化が進む中、子育てや女性の社会的格差は大きな問題だ。

 このシリーズは多くのネットユーザーに読まれ、SNS上でも大きな反響を呼んだ。十分な分量とディテールをしっかり書く臨場感。小さなファクトを積み重ねることで、ユーザーたちは「他人ごと」ではなく、「自分ごと」として読んだに違いない。

 十分な分量と現場感、丁寧な記述。読み手の共感を得ながら社会問題を提起していくには、どうしたらいいか。この連載は、インターネット上でのルポルタージュの見せ方についても一つの解を示している。

■参考URL
見知らぬ土地への転勤と激務で帰らぬ夫 「アウェイ育児」に苦しむ妻(Yahoo!Japanニュース)
「育児は女性のもの」が覆い隠す社会の歪み――見え始めた「母性愛神話」の限界(Yahoo!Japanニュース)
母親が直面する孤立子育て……全てを抱え込んで破綻、「妻の孤独」の泥沼(Yahoo!Japanニュース)
ワンオペ育児の中で「こうでなきゃ」が苦しめる “理想の母親像”の呪縛(Yahoo!Japanニュース)

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高田昌幸
 

ジャーナリスト、東京都市大学メディア情報学部教授(調査報道論)。

1960年生まれ。北海道新聞、高知新聞で記者を通算30年。北海道新聞時代の2004年、北海道警察の裏金問題取材で取材班代表として新聞協会賞、菊池寛賞、日本ジャーナリスト会議大賞などを受賞。

 
 
   
 

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