ミャンマーの怪僧に会いに行く

  1. オリジナル記事

◆ロヒンギャ危機のキーパーソン

 年齢や入国日、査証(ビザ)の種類……聞かれるであろう情報を先に答え、パスポートを差し出した。「私は怪しくないし、やましいことはない」と態度で示すのだ。イミグレの係官が面食らった感じでパスポートを受け取った。ページをめくってミャンマーのビザを探していくが、周囲が暗く見つけることができないらしい。スマホのライトでビザの載ったページを照らしながら、「ほら、このページですよ」と示し、従順で素直な観光客になってみせた。係官がビザページの内容をメモしたり、スマホで撮影したりしている。次に彼らは携帯で誰かと話し始めた。しばらくすると、「ひとまず、イミグレの事務所に行きましょう。観光ビザなのに、なぜこんな場所まで来て映像を撮っていたのか、説明してほしい」と言う。

まずい。

 この状況でイミグレの事務所に行くのは、避けたい。何としても、避けなければいけない。寺院や景観を撮影することは問題ないが、ミャンマーでは政治的な内容に触れる取材は厳しく制限されていた。僧侶の説法を映していた程度であれば、本来は問題ない。だが、私が撮影していた僧侶は、過激な発言を続け、政治的に際どい立場となっている。いわゆる「ロヒンギャ危機」のキーパーソンでもある。当時、どの西側メディアもまともに取材できていない人物だった。

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 この記事は「ミャンマーの怪僧に会いに行く」第1回の冒頭部分です。2021年5月10日、サブスクの「スローニュース」で公開されました。記事は7月上旬までの5回連載です。

 政情不安の続くミャンマーでは、2021年2月の軍事クーデター前から「ロヒンギャ危機」と呼ばれる迫害・虐殺が起きていました。ミャンマーの多数派である仏教徒らが少数派のイスラム系住民に対し、強圧的な対応を取り続けていたのです。その中に、“怪僧”と呼ばれた高位の仏教指導者がいました。インターネットを駆使し、分断と宗教対立を煽り、少数派への迫害を正当化しているというのです。

 その人物に直接取材できた西側メディアはほとんどありませんでしたが、フロントラインプレスの岸田浩和さんと、ドキュメンタリー映像作家の久保田徹さんは何度も現地に入り、“怪僧”へのインタビューを実現させました。いったい、そこで何が語られたのか。仏教指導者の正体とは? この連載では、インタビューに至るプロセスそのものも明かされています。波乱万丈、危機と痛快が織りなす様はドラマのよう。ぜひ、全編をお読みください。

 連載は「スローニュース」で読むことができます。下記のリンクからアクセスしてください。会員登録が必要です。
https://slownews.com/stories/U9jOTYCGlJE/episodes/JwEyeRcYH24#start

 

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岸田浩和
 

ドキュメンタリー監督、映像記者。

立命館大学在学中にヤンゴン外国語大学へ留学し、映像制作に触れる。 光学機器メーカー、フリーランスライターを経て、2012年発表の短編ドキュメンタリー「缶闘記」で監督デビュー。同作で5カ国8カ所の映画祭に入選する。近作の「Sakurada Ze...

 
 
   
 

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