◆政治資金所管の総務大臣も「紙」
政治の世界では、2021年も不透明なカネにまつわる事件や疑惑が絶えなかった。政治とカネに関する根本資料の1つ、政治資金収支報告書の透明化はどんな現状にあるだろうか。
共同通信が昨年12月末に配信した記事『オンライン提出、たった4% 20年政治資金報告書』によると、総務省所管の政治資金収支報告書に関し、オンラインで提出した国会議員関係の政治団体は4.4%にとどまった。残りの95.6%は全て、旧態然とした「紙」での提出だったことになる。
政治資金の流れを透明化するには、関係書類を誰でもチェックできるようにすることが欠かせない。そのカギを握るのが政治資金収支報告書などの電子化だ。政治資金規正法はオンライン提出を努力義務としか定めていないが、政治資金を所管する総務大臣の金子恭之氏、デジタル化を推進する旗振り役のデジタル担当大臣の牧島かれん氏らの政治団体も「紙」の提出だったという。
「紙」のみの提出の場合、その内容を知ろうとすれば、役所の窓口に出向いたり、情報公開請求を行ったりする必要がある。忙しい一般の人には面倒で、情報にアクセスしやすいとは言えない。金子、牧島両大臣に限らず、95.6%の国会議員は「透明化されたくないのだろう」と思われても仕方あるまい。
◆都道府県のネット非公開は新潟、石川、兵庫、広島、福岡の5県
一方、都道府県選挙管理委員会が所管する政治団体については、原本のネット公開が進んできた。2021年11月からは福井県選管が政治資金収支報告書の原本をインターネットで公開するようになった。全国で42番目の対応。これで、原本をネット公開していないのは、新潟県、石川県、兵庫県、広島県、福岡県の5県となった。
「原本」よりも記載事項の少ない同報告書の「要旨」については、都道府県選管がそれぞれの公報で公表しており、その公報はネットで閲覧できる。ただし、要旨で分かるのは、5万円を超える寄付者の氏名や金額、パーティーの収支などのみ。支出の項目は示されておらず、政治資金が何に使われたのかは分からない。そのため、「原本」の公開を求める声が高まっていた。
福井新聞の報道によると、ネット上での原本公開に際し、紙書類のPDF化については外注せず、担当職員が県内の全政治団体分、数千枚を自らPDF化した。そのため、新たな費用は発生しなかった。福井県選管は「報告書をいつでも見られる環境にすることは、政治資金の透明性を確保するという規正法の趣旨に合う」と話していたという。
『オンライン提出、たった4% 20年政治資金報告書』(共同通信、2021年12月29日)
『政治資金の収支報告書 ネットで原本公開』(福井新聞 2021年11月30日)