石垣島や奄美群島などを擁する南西諸島に、米軍が新たな攻撃拠点をつくる具体的計画が明らかになった。共同通信がきのう12月24日の朝刊用として、加盟各社に配信したスクープ記事だ。沖縄タイムス、琉球新報という沖縄2紙のほか、河北新報(宮城県)、中日新聞(愛知県)、熊本日日新聞など全国で18紙が1面トップとして扱った。
『南西諸島 米軍臨時拠点に』『台湾有事で共同作戦計策 住民巻き添えリスクも』(河北新報)
『台湾有事で日米共同作戦案』『南西諸島に米軍臨時拠点 正式計画協議へ』(中日新聞)
『台湾有事 日米が共同作戦』『南西諸島 米軍拠点に』(高知新聞)
『南西諸島に米軍臨時拠点 台湾有事』『日米共同作戦計画 策定へ』(熊本日日新聞)
『南西諸島に攻撃拠点 米軍、台湾有事で展開』『住民巻き添えの可能性』(沖縄タイムス)
各紙の見出しは異なるが、内容は同じ。台湾有事を想定した日米の動きはここ数年継続しているなかで、このスクープはかなり踏み込んだ内容を伝えている。記事はこう始まっている。
自衛隊と米軍が、台湾有事を想定した新たな日米共同作戦計画の原案を策定したことが分かった。有事の初動段階で、米海兵隊が鹿児島県から沖縄県の南西諸島に臨時の攻撃用軍事拠点を置くとしており、住民が戦闘に巻き込まれる可能性が高い。年明けの開催が見込まれる外務・防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)で正式な計画策定に向けた作業開始に合意する見通し。
平時は新たな基地の建設などはせず、台湾有事の緊迫度が高まった初期段階で自衛隊の支援を受けながら部隊を投入する。米軍が日本国内に拠点を設けるためには、日本政府としての政策決定、土地使用や国民保護などに関する法整備の必要がある。実行されれば南西諸島が攻撃対象となるのは必至で、住民の安全を考慮しない計画への批判は免れない。
南西諸島は、トカラ列島や奄美大島から沖縄本島、石垣島、与那国島などに連なる。記事によると、有人・無人の計200弱の島のうち、軍事拠点化の可能性があるのは約40カ所。水を自給できることを条件に選定された。陸上自衛隊がミサイル部隊をすでに配備している奄美大島や宮古島、これからミサイル部隊を配備予定の石垣島も含まれているという。
このスクープを取材した共同通信の石井暁・専任編集委員は解説記事の中で「南西諸島の島々を臨時の軍事拠点にする共同作戦計画は米軍の強い要求に基づくもの」と強調。今年夏頃から米軍は自衛隊に対し、「日米間の政治的プロセスは待っていられない」として一層強硬な姿勢に出るようになったという。こうした動きに対し、石井氏は「米中対立のはざまで法的根拠があいまいなまま住民の安全をないがしろにすることは許されない」と記している。
「住民の安全をないがしろ」とは、軍事拠点を設ける計画を具体化する一方で、島民の安全確保については自治体側に丸投げしているからだ。人口の多い奄美大島には約6万人、宮古島と石垣島にはそれぞれ約4万9千人が住む。仮に戦闘状態になったとき、これら万単位の住民をどうやって島外に脱出させるのか、どこへ向かわせるのか。米中が戦闘状態になれば、米軍の攻撃拠点が逆に攻撃目標となるのは必至。それにもかかわらず、住民待避の計画は放置されているという指摘である。
この報道を受けた形で、沖縄では「また沖縄を戦場にするのか」という批判と怒りが高まっている。
『「沖縄が再び攻撃目標 あってはならない」台湾有事で日米作戦、知事が事実確認を求める』(沖縄タイムス 12月24日)
『日米作戦・台湾有事「沖縄を戦場にさせない」超党派組織を結成へ』(琉球新報 12月25日)
『台湾有事日米共同作戦 「軍の暴走」は認められない』(琉球新報社説 12月25日)