政治・選挙資金の報告書ひとつすら正確に書けない…? そんな政治家が今も続出中 

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◆「他の政治家に影響が出る」から自分も虚偽記載…?

 2022年は「選挙の年」でもある。7月に参院選があるほか、知事選も2月6日の山口県を皮切りに、京都府や沖縄県、福島県、滋賀県、長野県など14府県で予定されている。そんな選挙イヤーにもかかわらず、この年末年始も「政治とカネ」にまつわるニュースが飛び交っている。しかも、政治家の“開き直り”とも思える発言が目立つのだ。

 業者からもらったカネを政治資金収支報告書にきちんと記載すれば、「他の政治家に影響が出る」から記載しなかった、という理解不能な言葉を口にしたのは、吉川貴盛・元農相である。大手鶏卵会社「アキタフーズ」(広島)の前代表から賄賂を受け取ったとして、収賄罪に問われ、公判中だ。

 読売新聞によると、吉川被告は1月12日に行われた東京地裁の公判の被告人質問で、アキタフーズの前代表から受領した現金を政治資金収支報告書に記載しなかった理由について、「記載すれば(前代表に)迷惑をかけ、政治資金パーティーの券を購入してもらえなくなると思った」と述べた。さらにアキタフーズの前代表は他の政治家にも現金を提供してたため、吉川被告は「自分が収支報告書に記載すれば、他の政治家や前代表に迷惑がかかると思った」と述べたという。

吉川貴盛・元農林水産大臣=2019年3月(農水省のHPから)

◆「実際にもらった人の住所やわからず、きょうだいの名を勝手に書いた」

 山梨県富士川町の志村学・前町長(贈収賄事件に絡み辞職)をめぐっては、その政治団体に虚偽記載があることがわかった。NHKの調査報道によって、1月13日に発覚した。前町長は取材に対し、「実際には別の人物からの寄付だったが住所や職業が分からなかった。(政治資金収支報告書の)提出の期限がっていたのできょうだい3人の名前を勝手に使った」と説明したという。

 また、政治団体の会計責任者の署名も前町長が自分で書いたものだった。これも文書の偽造に当たる可能性が極めて高い。

◆「記載する前に返せば、もらってなかったことになる」

 山形県鶴岡市長の皆川治氏も、不可解な釈明をしている。皆川氏については、2017年10月の市長選期間中に現金100万円の寄付を受け取りながら、それを選挙運動費用収支報告書に記載していなかった事実が発覚。12月27日の市議会全員協議会で改めて事情を説明した。山形新聞の報道によると、皆川氏は選挙から4年近くが過ぎた2021年8月に自ら支援者宅を訪ね、100万円を返金した。これについて「(報告書に)記載する前に返せば、受領しなかったことにできると考えた」と述べた。返金が公選法で禁じられている寄付に当たる可能性については「必要な確認、協議を行いたい」と語ったという。

 選挙資金は公職選挙法で、政治資金は政治資金規正法で、カネの動きをきちんと報告書に記載することが義務付けられている。虚偽記載が発覚すると、決まって「秘書や事務にまかせていた」「報告書の内容を訂正する」といった発言が当人から出る。政治に関する自身のカネすらきちんと扱えない政治家に、巨額の予算をきちんと扱えるのか。あるいは、扱う資格があるのだろうか。

『吉川元農相「収支報告書に記載すれば、他の政治家にも影響」と釈明』(読売新聞 2022年1月22日)
『大調査 確定申告で政治献金を取り戻す国会議員たち』(フロントラインプレス 2021年5月21日)
『議員秘書が語る「選挙余剰金」のすさまじい実態 現役3人が匿名回答「報告書はまったく違う」』(フロントラインプレス 2019年6月21日)

 
   
 

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