「3カ月先どうなってるか」「スマホが命綱」 年末年始、炊き出しの列で声を聞く

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命綱はスマホ「止められたらバイトもできない。終わりだよね」

 12月30日、東京都内は朝方、氷点下近くまで冷え込んだ。麹町の協会で中華丼などが配られていた午後1時には14.1度まで上がったものの、夕暮れとともに寒さはまた厳しくなる。

 冷たく、強い北風が吹く中、新宿に足を伸ばした。都庁近くの新宿中央公園。午後6時からの炊き出しを前に4時半から冬物衣料が配布されることになっていた。スケートボードを楽しむ少年たちの横で、支援者たちがブルーシートを広げていく。段ボール箱から毛布やコート、セーターやズボンなどが大量に運び込まれた。その周りを約100人が囲み、気に入った服や寒さをしのげる服を選び始めた。

 大きなビニール袋に毛布や何着もの服を詰め込む人、自分の脚にズボンを合わせて長さを比べる人……。大半は50~70代の中高年の男性だが、中には30~40代の男性や、わずかながら女性もいた。

東京・新宿中央公園(撮影:本間誠也)

 

 両肩に3つのバッグをかけて服を選んでいた男性に話し掛けた。30代に見える。ぶっきらぼうなもの言いながらも、質問にポツポツと答えてくれた。

 男性は10月、派遣で働いていた機械工場を解雇され、工場が契約していたアパートからも「追い出された」。貯金はほとんどなかった。その後は日払いの清掃のアルバイトを「週に2、3回」。ネットカフェなどで寝泊まりしているという。手持ちの現金がなくて宿泊できないときは一晩中、新宿の街を歩き回ったり、マクドナルドで時間つぶしをしたりした。

 スマホの支払いを滞納してるので、いつ止められるか。早く(お金を)入れないと。止められたら掃除のバイトができなくなる。(そうなったら)終わりだよね。工場を首になったのはコロナ(のせい)か分からないけど、景気が悪いからじゃないの?……地下街が広いから、(新宿に)いるようになった。(地下街は)外よりはずっとあったかい。寒い時は何したって寒いから。

 今晩、12月30日の寝場所は「まだ決まってない」と男性は言った。

2021年が明けて「3カ月先はどうなってるか…」

 年が明けた1月2日。

 池袋のサンシャインシティは新春の買い物をする家族連れや若者たちでにぎわっていた。同じエリアにはプラネタリウムや水族館、高層ホテル、展望台もある。東池袋中公園があるのは、サンシャインシティのすぐ横、ほとんど同じ区画だ。

 日没の頃、その公園に長い列ができていた。午後6時からの弁当配布を待つ人たちだ。気温は5度を下回り、行列の人たちはみな肩をすぼめている。

 支援物資を受け取った男性(52)が立ち止まってくれた。弁当やお菓子、果物などが入ったビニール袋を手にしている。この会場の炊き出しに並んだのは「2度目」だったという。働いていた中古車販売会社を解雇され、「失業保険で何とか食いつないでいます」。だが、失業保険の給付も「あと2カ月で終わり」。次の仕事は決まっていない。

 アパートに住んでいるから、私なんかまだマシなほうかも。でも、3カ月先はどうなっているか。仕事は探しているけど、ないんですよ。アルバイトやパートみたいなのはあるけど、やっぱり安定したのに就きたいし……。先が見えないのがつらいです。夜寝れないし、怖くなる時もあります。

東京・東池袋で(撮影:本間誠也)

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本間誠也
 

ジャーナリスト、フリー記者。

新潟県生まれ。北海道新聞記者を経て、フリー記者に。

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