自民党京都府連 マネーロンダリングで「1億円選挙買収」と文春が調査報道 京都新聞も記事掲載

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◆「内部文書入手、1億円の選挙買収」と文春

 国政選挙の際、自民党京都府連が総額1億円を超える巨額の選挙買収を行っていたと文春オンラインが2月9日に報じた。記事のタイトルは『内部文書入手 自民党が「1億円選挙買収」を行っていた 国会議員・党職員も証言』。ジャーナリスト赤石晋一郎氏が京都府連の内部文書を数百枚入手し、当事者である元国会議員、元自民党職員、金を受け取った地方議員などの証言から事実関係が裏付けられた、としている。詳細は2月10日発売の月間文藝春秋に掲載さている。

 この問題については、京都新聞も2月10日、『自民京都府連支出の政治資金、選挙活動の対価か 内部文書に「マネーロンダリング」』との見出しで報道した。その記事は、以下のように伝えている。

府連は「正当な政治活動」と主張するが、京都新聞社が入手した府連の内部文書では「候補者がダイレクトに議員に交付すれば公職選挙法上は買収になるので、(府連を経由した)マネーロンダリング(資金洗浄)」と明記している。識者は「当事者の認識次第では買収に当たる可能性がある」と指摘する。

◆自民党京都府連の事務引き継ぎ文書に「マネーロンダリング」と明記

 これらの報道によると、国政選挙が行われる前になると、自民党京都府連は府議や京都市議が代表を務める同党支部に対し、「交付金」などの名目で資金を支出してきた。資金提供は相当前からだったという。また、2014年に府連で作成されたという事務引き継ぎの文書には①府連の原資は国会議員や選挙区支部長(国政選挙の候補予定者)からの寄付金②府連を通す理由は「いわばマネーロンダリングをする」ためーなどと記されていた。京都新聞はこれらの事実から、府議や市議に渡った資金は「事実上選挙活動への対価であることをうかがわせている」と記している。

 選挙運動に関わる資金を候補者が直接、府議や市議らに提供すると、公職選挙法が禁じる「買収」に当たる。最近の選挙買収では、河井克行(元法相)・案里夫妻が票の取りまとめの報酬として合計約2870万円を地元の広島県議らにばらまいた事件があった。一方、選挙ではなく、普段の政治活動の一貫として資金が提供されたというのであれば、政治資金規正法の枠内の話となり、直ちに違法性は問えない。このため、資金の受け渡しに関わった当事者らが資金の性質をどう認識していたかが極めて重要になる。

 文春オンラインなどの調査報道を見る限り、当事者らは“候補者が直接資金を府議・市議に渡せば公選法違反になる”ことを十二分に分かっていたからこそ、間に京都府連を介する「マネーロンダリング」を行ったと思われる。

◆日常の政治活動と選挙運動を区別できるのか?

 「選挙資金」と「政治資金」の不透明な関係については、過去にいくつもの疑惑が浮上している。

 こうしたことから、選挙と政治のカネに詳しい日本大学法学部の岩井奉信名誉教授はフロントラインプレスの以前の取材で、「選挙のカネは公職選挙法で、一般の政治活動のカネは政治資金規正法で、それぞれ別個に縛るという2本立ての現行の法制度がおかしい。本来、双方は区別できるものではない。普段の政治活動の延長線上に選挙があるのであり、双方は連続的で表裏一体のもの」と指摘した。そのうえで、2つの法律を一本化するなどして、政治のカネを透明化する法律を新たに作るべきだと提唱している。

■参考
『内部文書入手 自民党が「1億円選挙買収」を行っていた 国会議員・党職員も証言』(文春オンライン 2022年2月9日)
『自民京都府連支出の政治資金、選挙活動の対価か 内部文書に「マネーロンダリング」』(京都新聞 2022年2月10日)
『公職選挙法の改正で「余剰金」の抜け穴を防げ 岩井奉信・日本大学法学部教授インタビュー』(フロントラインプレス 2019年6月28日、東洋経済オンラインで公開)

 
   
 

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