自民党安倍派(清和政策研究会)の政治資金パーティーの収入からノルマを超えた分をキックバックしてもらったにも関わらず、政治資金収支報告書(以下、収支報告書)に記載していなかったことが政治資金規正法の不記載罪などに当たるとして、柴山昌彦・元文部科学大臣、和田義明・元内閣府副大臣、堀井巌・元外務副大臣らが17日、刑事告発されたことが分かった。
告発をしたのは、自民党裏金事件の追及を続ける上脇博之神戸学院大学教授。
告発状などによると、柴山元大臣が代表を務める「自由民主党埼玉県第八選挙区支部」は2018年以降に896万円のキックバックを安倍派から受け取っていたにも関わらず、収支報告書に記載していなかった。
また、堀井元副大臣が代表を務める「自由民主党奈良県参議院選挙区第一支部」は2018年以降に876万円の安倍派からキックバックを受け取っていたにも関わらず、収支報告書に記載されていなかった。
和田義明元副大臣が代表を務める「信和会」は2018年以降に990万円のキックバックを安倍派から受け取っていたにたにも関わらず、収支報告書に記載していなかった。
3氏はいずれも、自民党五派閥のパーティー券不記載問題で東京地検特捜部が捜査をした後の2024年1月から2月にかけて、収支報告書を修正したことによって安倍派からキックバックを受けていたことが発覚した。
上脇教授は告発状の中で、議員が代表を務める政治団体ではなく、議員本人がキックバックを受けとっていたことから、政治団体の収支報告書に記載しなかったのではないかとも指摘している。
3議員を刑事告発した上脇教授は次のように説明する。
「2018年分はすでに公訴時効5年が完成しているため、いずれも2019年分~2022年分の不記載・虚偽記入罪で刑事告発しました」
このほかにも、7月に入って、衛藤征士郎・元衆議院副議長が1070万円、宗清皇一・元経済産業大臣政務官が1408万円、宮本周司・元財務大臣政務官が1482万円のキックバックを受けていたことで、同じく上脇教授に刑事告発されている。
◆上脇教授「一連の裏金事件で特捜部は証拠があったのに不起訴にした。私は許せない」
上脇教授はさらに一連の裏金事件についても言及した。
「世耕弘成議員と萩生田光一議員については2018年分も含め刑事告発していたので東京地検特捜部は5月初めに不起訴にしましたが、両議員の不起訴理由は“嫌疑不十分”で、会計責任者や秘書の不起訴理由は“起訴猶予”でした。“起訴猶予”とは、罪を犯したことが証拠上明らかなのに起訴しないことを意味しています。つまり特捜部は会計責任者らが不記載・虚偽記入の罪を犯していた証拠があったのに不起訴にしていたのです。
議員の判断なしに会計責任者または秘書の独断で裏金にするはずがありません。私は許せないので、東京検察審査会に“起訴相当”議決を求めて審査申立てしました」
キックバックを受け取っていた議員のうち、4月までに刑事告発された二階俊博・元自民党幹事長らについては7月に入って不起訴処分となったことが東京地検から発表された。不起訴処分になった議員や関係者らについては、現在、告発者の上脇教授が不起訴理由を開示請求しており、不起訴理由などが分かり次第、検察審査会に申し立てをする方針。
「世耕、萩生田両議員以外の議員らも、会計責任者または秘書に責任を押し付けて責任逃れするのでしょう。自民党議員は卑怯者だらけです。特捜部は捜査を尽くさずに、会計責任者らを“起訴猶予”で、議員を“嫌疑不十分”で、それぞれ不起訴にするでしょう。それでも、私は刑事告発を続けます」