種子島沖の馬毛島に米軍施設ができる この半世紀、沖縄以外では初 地元の反発は強かったが…

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◆沖縄以外での本格的な米軍施設新設、この半世紀で初 無人爆撃機も

 鹿児島県西之表市の馬毛島(まげしま)に米軍の訓練基地を造る計画が実施段階に入っている。米軍空母艦載機陸上離着陸訓練(FCLP)移転と自衛隊基地を整備する計画がそれ。沖縄県以外で本格的な米軍施設ができるのは、1972年の沖縄返還以降の半世紀では初めてだという。全国ではあまり大きなニュースになっていない。「地元に説明がないまま建設が強行されている」と強く反発していた地元市長らも、ここに来て反対姿勢をトーンダウンさせ、“黙認”に転じている。

馬毛島の上空写真(防衛省のHPから)

 

 馬毛島は、種子島の西之表市街地から西12キロの沖に位置し、種子島からもよく見える。戦後に開拓事業が進み、サトウキビ栽培などが行われていたが、500人余りいた島民は次第に島を去り、1980年からは20年以上無人島になっていた。2007年、硫黄島で行われているFCLPの移転先として浮上。2011年には、在日米軍再編の一環として空母艦載機の恒久的な訓練施設をこの島に設ける方針が明記された。

 同じ鹿児島県の海上自衛隊鹿屋基地には、米空軍の無人攻撃機MQ9を配備する計画も1月25日、南日本新聞の独自取材で明らかにされている。

◆「地元に説明がないまま進めるのか」 地元西之表市長らは猛反発

 問題が複雑になったのは、2021年暮れから年明け後にかけてのことだ。日米両政府が1月7日の安全保障協議委員会で、中国軍の拡張や“台湾有事”を念頭にして、馬毛島での整備を従来の「候補地」から「整備地」へと格上げしたところ、地元の西之表市や鹿児島県が「地元に何の説明もない」と反発したからだ。その間の経緯は、地元紙・南日本新聞や民放各局の報道に詳しい。

 西之表市の八板俊輔市長は1月、「馬毛島が正式決定」したとする防衛省の姿勢に強く反発し、「いつ、どうやって決めるか尋ねてきたのに(地元には何も説明せずに決めた)」「住民置き去りだ」と記者会見などで語っていた。とくに西之表市役所での防衛省職員との面会は報道陣に公開。八板市長は「ボーリング調査や環境影響評価(アセス)後に決まると受け止めている市民が大半。私もそうだ」などと主張した。鹿児島県の塩田康一知事も県庁を訪れて「決定」を伝えた防衛省職員に対し、「(環境アセスメントの途中段階での決定に)何がどう進んでいるのか分からない。丁寧さに欠ける」と言葉を強め、政府の姿勢を批判していた。

◆「環境アセスの途中でもやる」と防衛省 地元は批判をトーンダウン

 ただ、ここに来て、地元の反発は少しトーンが変わり始めたようだ。

 南日本放送のニュースによると、2月12日に鹿児島県庁で塩田知事と会談した岸信夫防衛大臣は、馬毛島での自衛隊基地の整備は「新たな段階に入った」として、環境アセスメントの結論が出ないうちに入札公告などを行う姿勢を示した。

 これに対し、塩田知事はこれまでと違い、基地整備への賛否を示さなかったという。

◆政府による馬毛島買収には“上乗せ”があった?

 一方、これも全国メディアでは、大きく報道されていないが、日本政府による馬毛島の用地買収には購入費の上乗せ疑惑も浮上した。

 鹿児島の地元メディアによると、2019年12月に地権者から島の6割を買収した際、防衛省熊本防衛支局は馬毛島の6割にあたる約470ヘクタール(638筆)を地権者のタストン・エアポート(東京)側から約10億3600万円で買収した。さらに敷地造成費として約35億5000万円を支出している。開会中の衆院予算委員会で、田村貴昭議員(共産、比例九州)が独自に入手したとする資料に記されていたもの。土地の造成そのものに違法性があり、「敷地造成費」は水増し目的だった疑いがあるという。

『馬毛島問題 岸防衛相「環境影響評価中でも準備進める」』(南日本放送 2022年2月12日)
『馬毛島買収に「造成費」上乗せか 交渉で元地権者が防衛省に要求 共産党「不当にかさ上げ」と指摘』(南日本新聞 2022年2月9日)
『鹿児島で進む軍事・防衛強化 安全保障の専門家はどう見る?』(南日本放送 2022年2月8日)

 
   
 

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