入管施設に収容されている外国人への処遇問題で、毎日新聞が2月13日にスクープを放った。『「うるさい、静かにしろ!」 入管施設「制圧」の実態 映像入手』と題する記事で、入管職員による“制圧”ぶりがすさまじい。必読記事だ。2021年3月には、名古屋の入館施設で、スリランカ女性のラトナヤケ・リヤナゲ・ウィシュマ・サンダマリさん(31)が衰弱死して大問題となったが、外国人の処遇に改善の兆しはあるのか。
記事は前編・後編に分かれており、前編はこう始まる。
「倒そう、制圧、制圧」。手袋をはめた制服姿の入管職員が、収容されていた日系ブラジル人男性を6人がかりで押さえ込み、「痛い、痛い」と叫ぶ男性の腕をねじり上げた。「痛いじゃねーんだよ」「うるさい、静かにしろ」。職員の大声が響き渡る。これは、男性が東京入国管理局(現・東京出入国在留管理局、東京都港区)に収容されていた際に職員による暴行でけがをしたとして、国に損害賠償を求めた裁判で東京地裁に提出された証拠のビデオ映像だ。
記事によると、裁判の原告は、日系ブラジル人、アンドレ・クスノキさん(35)。東京入管から茨城県牛久市の「東日本入国管理センター」に移送されると告げられた際、この施設では自殺者が出ていたことなどから移送を希望しないことを伝え、理由について尋ねたが、決定事項だとして入管側は話し合いをしなかった。クスノキさんは、この4日後の移送の際に、多数の入管職員に床に倒されて押さえつけられたり、腕をひねられたりされるなど暴行を受けて負傷したとして、国に500万円の損害賠償を求めて2019年8月に提訴している。
毎日新聞記事の前編に続く後編は『「痛くてもやむを得ない」 収容者「制圧」の入管職員の証言』。後編には、クスノキさんを“制圧”した入管の入国警備官の法廷証言が詳述されている。
それによると、映像では、制圧を受けているクスノキさんが苦痛に顔をゆがめ、何度も「痛い、痛い」と叫ぶ場面が映っている。それについて問われると、入国警備官は「けがの発生を防ぐため」などと繰り返し、制圧の正当性を主張した。しかし、前述の通りクスノキさんは負傷し、移送の翌日「左腱板不全損傷」と診断されている。また、この入国警備官はクスノキさんが抵抗し、周囲もけがをする恐れがあったため「痛かったとしても、それはやむを得ない」と答えたたという。
■参考
『「うるさい、静かにしろ!」 入管施設「制圧」の実態 映像入手』(毎日新聞 2022年2月13日)
『「痛くてもやむを得ない」 収容者「制圧」の入管職員の証言』(毎日新聞 2022年2月14日)
『ウィシュマさんビデオ詳報【上】入管が見せたもの、隠したもの』(フロントラインプレス 2022年1月22日)