◆刑事告発は不起訴(嫌疑不十分)と起訴猶予 「それはおかしい」と上脇教授
自民党の一連の裏金事件に関連し、政治資金規正法違反容疑(不記載、虚偽記載)で東京地検の捜査対象になったにもかかわらず、不起訴処分になったのはおかしいとして、神戸学院大学の上脇博之教授が8月19日、元国家公安委員長の自民党参議院議員・山谷えり子氏(74)ら3人について、東京検察審査会に審査を申し立てた。
山谷氏の告発容疑は、自身の国会議員関係団体「21世紀の会」が自民党安倍派(清和政策研究会)から2018年以降の5年間で総額2,408万円を受け取っていたにもかかわらず、法の規定に背き、政治資金収支報告書にその事実を記載していなかったというもの。しかし、今年4月に告発を受理した東京地検は今年7月8日、「21世紀の会」代表の山谷氏と会計責任者を嫌疑不十分で不起訴とし、事務担当者は起訴猶予としていた。
検察審査会は有権者から選ばれた市民11人で構成されており、検察が不起訴とした判断が適切だったかどうかを審査する。「起訴相当(起訴すべき事件である)」か「不起訴不当(さらに詳しく捜査すべきである)」の議決が出た場合、検察は事件を再検討しなければならない。
◆山谷えり子議員、これまで国家公安委員長や拉致担当大臣などを歴任
山谷氏は2000年の衆院選で民主党(比例東海ブロック・単独1位)から出馬し、初当選。その後、民主党を離れて自民党に入り、自民党の国会議員として活動している。2014年の第2次安倍内閣で初入閣し、国家公安委員長や拉致問題担当大臣、国家強靭化担当大臣などを努めた。
◆「クリーン山谷」、自民党の綱紀委員会委員長や参院の政治倫理委員会委員長も歴任
この間、自民党では女性局長を務めたほか、綱紀委員会委員長も経験。参議院でも政治倫理委員会の委員長も努め、「クリーンな政治」を訴えてきた。また、北朝鮮の拉致問題についても党内で要職を歴任し、“拉致問題の解決に熱心な議員”として知られるようになっていた。
◆「事務担当者の犯罪は明らか 山谷氏本人への捜査も尽くせ」と上脇教授
一連の裏金事件では、自民党による聞き取り調査などで、安倍派と二階派(志師会)の国会議員の計85人以上が派閥からのキックバック(裏金)を受け取っていたことがわかっている。このため、上脇氏はかねてから「不記載は組織的かつ故意に行なわれたことは明らか」として、裏金を受領した国会議員らの刑事告発を続けている。
山谷えり子氏に関する今回の申し立てでは、起訴猶予とされた「21世紀の会」の事務担当者は犯罪を犯したことが証拠上明白であるにもかかわらず、検察官の判断で不起訴にしたのは不当、と指摘している。また、山谷氏本人と「21世紀の会」会計責任者については、「嫌疑不十分」だった点を重視。捜査を尽くして十分な証拠を集め、起訴すべきだとしている。
上脇教授は次のよう述べている。
「証拠上、規正法違反が明らかだったにもかかわらず起訴猶予になった事務担当者について、検察審査会は十分な審査を行い、“起訴すべきである”と議決してほしい。山谷議員や会計責任者の意向を無視して事務担当者が勝手に不記載にすることはあり得ないので、山谷氏本人らについても『起訴相当』の議決をしてほしい」
「山谷議員は安倍派からキックバンクされた寄付金を支出していなかったと自身のブログで説明したが、2021年分の収支報告書の訂正を見ると、支出がなされている。自身の説明と矛盾する。こうした無責任な説明をした以上、刑事責任とは別に、山谷氏は政治的責任を取るべきだ」