自腹買取り、突然の賠償請求、欠勤への罰金―コンビニバイトが訴える実態

  1. オリジナル記事

自腹買取り、突然の賠償請求、欠勤への罰金―コンビニバイトが訴える実態(2018・10・11 Yahoo!ニュース特集)

 コンビニのアルバイト問題がたびたびクローズアップされている。異常な長時間労働に加え、売れ残り商品の自腹買い取り、レジの不足金の自己負担……。それらを訴える声は依然として消えない。最近では、突然100万円もの「損害賠償」を請求されたり、やむを得ない事情で欠勤したのに罰金を徴収されたりといった、より悪質な事例もある。一方で、コンビニ本社とフランチャイズ契約を結ぶオーナーたちも、本社とアルバイトとの間で板挟みだという。こうしたなか、自腹買い取りに「NO!」の声を上げ始めた若者たちもいる。実態を追った。

◆「損害賠償100万円」 通告は突然

 「あの日のことは、今も忘れられません」と大学院生の梅原宏太朗さん(25)=仮名=は言う。昨年9月の出来事だ。
 夜9時すぎ。いつも通り、アルバイト先のファミリーマートに向かった。東京23区内。JRと地下鉄が乗り入れる駅前の店舗は夜間も客足が途切れない。店に到着すると、同僚のバイトが「店長が呼んでいる」と言う。地下の事務所に下りると、店長と見知らぬスーツ姿の男性が待っていた。スーツの男性は司法書士だという。
 話は思わぬ内容だった。

 梅原さんによると、店長と司法書士は、店内の監視カメラの映像を示しながら「梅原さんがレジからカネを持ち出した」「深夜に店舗を施錠して客が入れないようにした」などと言ってきた。そして、司法書士はこう続けたという。
 「損害額が100万円を超えることは確か。支払わない場合は警察、学校、家族、出すとこにすべて出します」
 これに対する梅原さんの言い分はこうだ。
レジからカネを持ち出したのは釣り銭が足りなくなったためで、レジの1万円札をATMでいったん自分の口座に入金し、1000円札に崩して引き出し、釣り銭に充てた。店舗に鍵をかけたのは、深夜の1人勤務である「ワンオペ」時、冷凍食品が大量に搬入され、レジで対応していたら商品が溶けてしまうと思ったから。過去に2回、それぞれ10分間ほど店を閉めたことがある――。

◆「なんで、なんで?」 念書に押印を迫られ

 「(夜勤の前に)店長は釣り銭用の1000円札を20枚しか用意してくれないこともありました。とても足りない。だから、しょっちゅう釣り銭が足りなくなるんです。自分の口座に入れて両替する方法は、バイト仲間に教えてもらいました。僕から店長に(両替したことを)報告したこともあります」

 梅原さんはそう言って、自分の銀行通帳を取り出した。
通帳には、例えば「20,000」を入金後、同じ日に「9,000」を2回「2,000」をそれぞれ引き出した記録などがあり、彼の言い分を裏付けているように見えた。さらに、梅原さんは続けた。

 「深夜は商品の搬入が集中します。ほかにも調理器具の洗浄や床掃除、品出しとか。とても1人でできる仕事量じゃない。店の鍵を閉めたときは、すでにアイスが1時間以上(冷凍庫外に)置きっぱなしの状態で、ほかに方法がなかったんです」

 しかし、店長と司法書士と対峙するのに、学生の梅原さん1人では分が悪かった。

コンビニバイトの実態を語る男性(撮影:藤田和恵)

 この夜は母親に保証人になってもらうことで帰宅を許されたが、翌日、司法書士から再び「お金さえ払えば、穏便にすませる。さもないと、出るところに出る」と迫られた。
 結局、梅原さんは自身の非を全面的に認める内容の「念書」に署名し、母印を押してしまう。頭の中では「なんで、なんで?」と思いながら、拒むことができなかったという。

 梅原さんは昨年4月からこのコンビニでアルバイトを始めた。時給は1080円。勤務時間は午後10時〜翌日午前9時だったが、たびたび店長から正午すぎまで残ってほしいと頼まれ、ひどいときは夕方まで働き続けた。そのせいで、授業に出られなくなったこともあったが、なんとか期待にこたえようと頑張ったのだという。それだけに、「賠償請求」されるとは思ってもいなかった。
 梅原さんにとっては「学校に言う」との言葉が一番恐ろしかったという。

 「親や警察なら、調べてもらえば、僕は悪くないと分かる。でも学校は、たとえ僕が悪くなくても、退学になるんじゃないか、就職に影響が出るんじゃないかと、すごく不安でした」

 こうした事態について、ユニー・ファミリーマートホールディングス広報室は取材に対し、梅原さんのケースを把握しているかどうかも含め、「フランチャイズ加盟店とアルバイトの間に発生している問題であり、コメントする立場にない」としている。

◆過労で倒れたら「救急車で来い」

 東京都内在住のフリーター・梶田悠一さん(31)=仮名=も、コンビニで異常な長時間労働を強いられた経験がある。これまでセブンイレブンやファミリーマート、ポプラなど10店近くで働いてきた。このうち、2年前に勤めたローソンでは、夜勤明け後、2時間ほど休憩してそのまま日勤に入るシフトに「たびたび入れられました」と言う。
 「いつも人手が足りない状態で……。フリーターの僕は学生に比べて時間に融通が利くから、使い勝手がよかったんだと思います。日勤が終わるのは夜の10時でした」
 事実上の24時間連続勤務である。過労で倒れるのは時間の問題だった。

 ある日、出勤途中に突然、めまいがして道端に倒れ込んだ。通り掛かった誰かが救急車を呼んでくれたらしい。搬送される途中、携帯電話でオーナーに遅刻しそうだと伝えたところ、「そんなのダメだ。今すぐ救急車で店まで連れてきてもらえ」と怒鳴られたという。見かねた救急隊員が電話を代わり、オーナーと口論の末、なんとか病院に行くことができた。
 ところが、後日出勤すると、オーナーは「あの日は急遽、派遣社員を手配しなくてはならなかった」と言い、その分の人件費として2万円を請求してきたという。

 梶田さんによると、この店では、アルバイトも発注業務を担い、弁当やおにぎりなどが売れ残ると、その一部を買い取りさせられた。缶飲料やカップデザートを過って落とすと、それらも全て買い取り。レジの不足金だけでなく、万引きによる損害も、その時間帯に勤務していたアルバイトが割り勘で負担させられた。
 梶田さんの場合、これらの金額は毎月合計で3万〜4万円に上ったという。
 「この店ではサービス残業もしょっちゅう。深夜帯はワンオペで、休憩も取れませんでした。でも(勤務経験のある)ほかのコンビニでは、買い取りはさせない店もありましたから、結局はオーナー次第なんだと思います」

「自腹買取ゼロ」を掲げる札幌市での活動(撮影:藤田和恵)

*****************

 この記事は<自腹買取り、突然の賠償請求、欠勤への罰金―コンビニバイトが訴える実態>の一部です。Yahoo!ニュースオリジナル特集で、2018年10月11日に公開されました。取材はフロントラインプレスのメンバー、藤田和恵さん。劣悪な労働環境に苦しむ人々を追い続けています。

 記事ではこのあと、しわ寄せは、今やフランチャイズの店舗オーナーに及んでいることなどが詳しく紹介されていきます。
記事公開から少し年月が経過しましたが、コンビニをめぐる労働環境は決して好転していません。藤田さんは引き続き、この問題の取材を続けています。

  記事の全文は、下記のリンク先で読むことができます。クリックしてお読みください。Yahoo!へのログインを求められることがあります。また、写真の配置などが異なっています。
自腹買取り、突然の賠償請求、欠勤への罰金―コンビニバイトが訴える実態

藤田和恵
 

ジャーナリスト。

1970年、東京生まれ。北海道新聞社会部記者などを経て現在フリー。 Yahoo!ニュース特集で労働問題などについて執筆。

【主な著書】
 

関連記事