不思議な裁判官人事

  1. オリジナル記事

◆定年間際の裁判長が「国の責任」を認める?

 2021年2月19日、よく晴れた金曜日。

 東京・霞が関の裁判所庁舎前には、東京電力福島第一原子力発電所の事故で避難せざるを得なくなった人たちやその支援者、そして数多くの記者が集まっていた。東京高裁では、原発事故で千葉県に避難した避難者による集団訴訟『千葉訴訟』(第1陣)の控訴審判決が下されることになっていたからだ。被告は東京電力と国である。

 福島原発事故に関する集団訴訟では、東電はもちろん、国にも賠償を求める裁判が数多く起こされている。2021年3月末時点で15件の一審判決が出ており、このうち国の責任を認めたのはほぼ半分の8件。『千葉訴訟』では、一審の千葉地方裁判所が国の責任を否定している。控訴審で判断がひっくり返ると楽観的に考える関係者は多くなかった。そんな中、例外はいた。原発事故の取材を続け、千葉訴訟の判決直前に『東電原発事故10年で明らかになったこと』(平凡社新書)を上梓したサイエンスライター添田孝史である。控訴審での原告勝訴という予想を捨てておらず、高裁前でも「原告の勝ち」を口にしていた。科学的とはとても言えないが、その根拠は「裁判長はけっこういい歳だから」だという。

 後日、この時のことを聞くと、添田は「確かにそういう(定年が近いと国敗訴にしやすいなどの)話は聞くけど、全くエビデンスないですよね。誰かが検証した話も聞いたことない。まあ、都市伝説は都市伝説だからおもしろいんですけどね」と話した。

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 この記事は「不思議な裁判官人事」第1回の冒頭部分です。サブスクの「スローニュース」で2021年4月28日に公開され、7月まで全5回が掲載されました。
 裁判官人事の内実は、確かにほとんど知られていません。「国側を敗訴させた裁判官は出世しない。左遷される」「退官間際の裁判官だから、原告を勝たせた」――。そういった話は時々耳にしますが、それをデータなどに基づいて確かめたケースもありません。

 では、実際はどうなのか、調べてみよう! この取材プロジェクトはそうやって始まりました。大量の判決文の読み込み、複雑な人事の仕組み、追いかけるだけで大変な過去数十年間の裁判官人事……。専門家の協力も得ながら取材は進み、連載では詳細なデータや表も示しながら裁判官人事の秘密を解き明かしていきます。取材はフロントラインプレスの木野龍逸さん。そして名前を明かしていないフロントラインプレスのメンバーも加わっています。

 記事全文は「スローニュース」で読むことができます。連載です。まずは下記リンクからアクセスしてください。会員登録が必要です。
https://slownews.com/stories/OJFhBdYkhes/episodes/D1JmcpmBlJ8

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木野龍逸
 

フリーランスライター。

1990年代からクルマの環境・エネルギー問題について取材し、日経トレンディやカーグラフィックなどに寄稿。 原発事故発生後は、オンサイト/オフサイト両面から事故後の影響を追いかけているほか、現在はネット媒体や雑誌などで幅広く社会問題をカバーしている。  

 
   
 

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