◆与野党を問わず、「行方不明」は広がる
公職選挙法には、選挙費用の余剰金処理に関する規定はないものの、各陣営の資金には政党本部からのお金が流れ込んでいる。政党本部の資金の多くは、政党助成制度に基づく巨額の政党交付金(公金)だ。つまり、選挙資金は公的性格を帯びており、専門家はこれまで何度も「理屈の上でも道義的にも選挙の余剰金の使途は明確にすべきだ」といった指摘を続けてきた。
実際、選挙にはカネがかかると言われながら、かなりの候補者が選挙の際に資金を余らせ、その行方が不明になっている実態は、こうした閣僚にとどまらない。
フロントラインプレスは2019年、「政治とカネ」問題のエキスパートである岩井奉信・日本大学法学部教授(現在は日本大学大学院講師)の研究室と共同し、全国会議員を対象として「余剰金」の実態を調査した。それによると、野党の著名議員らにも余剰金不明の実態は広がっていた。当時の取材結果は、検索機能も備えたデータベースとして公開されているので、ぜひ目を通してほしい。
・選挙運動の余剰金を追う(東洋経済オンライン。記事は7本あります)
・選挙運動余剰金 議員個別の詳細ビジュアルデータ(東洋経済オンライン+フロントラインプレス、協力・スローニュース)
◆「まずは公選法の改正を、ゆくゆくは『政治活動法』制定で資金の透明化を」
選挙資金の「余剰金」問題について、岩井氏は次のように話している。
「余剰金は選挙資金とはいえ、広い意味では政治資金です。選挙資金も政治資金と同じように扱うべきです。余剰金も処理や報告のあり方について、今の法体系でいけば、公選法で何らかの規定を設けるべきでしょう」
——岩井先生は日頃から「政治活動法」が必要だと主張しています。この意味するところは?
「現実問題として、選挙資金と政治資金を区別することは難しい。政治活動の中に選挙活動があるはずで、選挙資金は政治資金の一部です。公選法と政治資金規正法という2つの法律があり、そして扱う法律が違うから資金の処理の仕方が別、というのはどう考えてもおかしい。僕が主張する『政治活動法』は、この2つ、政治活動と選挙活動を一本化すべきというものです。そうすれば、選挙資金の処理の仕方もわかりやすくなり、そもそも余剰金などという問題も起こりません。政治資金の流れも、より透明性が高まると思います」
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■参考
フロントラインプレスと日本大学の岩井研究室が2019年に調査した元データは下記のリンク先ですべて公開されています。引用ルールに基づけば、取材記者や研究者に限らず、誰でも自由に利用できます。
「選挙余剰金」データ LinkDate
「選挙余剰金」データ GitHub
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