◆バブル崩壊、「東京都湯沢町」の無残
バブル崩壊後、湯沢町はどんな状態になったのか。新潟日報は2003年10月27日朝刊に『シリーズ現場「東京都湯沢町」その後』と題する記事を掲載し、こう報告している。
「町はすっかり静かになった。今のマンション所有者は、本当に湯沢が好きな人」。建設ラッシュ時、役場で窓口となっていた高橋英夫・町学校教育課長(53)は時代の変化を実感する。
「あのころは『即日完売神話』に踊り、開発業者が次々入り込んできた」
町内のマンションは現在58棟、約1万4700戸。バブル崩壊で開発熱は冷め、1993年を最後につち音は聞こえなくなった。
岩原地区のあるマンション。新築時約2600万円だった2DKの部屋が、約250万円まで値を下げた。マンション売買を手掛ける町内の不動産業者は「バブル期の売れ残りが多く、今も極端な供給過剰。下げ止まりのめどが立たない」と打ち明ける。町を悩ませているのがマンション所有者の固定資産税滞納だ。昨年3月末現在の滞納繰り越し分は延べ約3600件、金額は実数で約1億9000万円にも上った。
◆高価だったマンションは捨て値、「170万円で引き取る」も
さらに時を経た2019年2月19日の『NIIGATA 平成考 バブルを越えて 「東京都湯沢町」の今』では、こんな実情が記事になった。
JR越後湯沢駅東口の不動産業「ゆざわ商事」の店先。通りに面した壁に、リゾートマンションの物件情報が数多く張り出されている。「2LDK 10万円」「2K 10万円」。こんな物件がいくつかある。営業課長の五十嵐大樹さん(37)は「交通の便がよく、管理が行き届いているマンションは品薄感がある。一方、町中心部から遠く老朽化が進む物件は、買い手がなかなか付かない。二分化が進んでいる」と明かす。
ただそんな「捨て値」のようなマンションに、目を付ける不動産業者もいる。「約200万円頂ければ、マンションを引き取ります」。大阪府吹田市の業者はこんな触れ込みで、ここ数年、マンション所有者を勧誘している。1990年代初頭、1LDKのマンションを購入した都内在住の男性会社員(60)の元にも昨年、業者のダイレクトメール(DM)が届いた。170万円を払えば、物件を引き取るという誘いだった。
リゾートマンションの投げ売りや、お金を出して物件を引き取ってもらう“マイナス売却”だけではない。日本生産性本部の「レジャー白書」によると、スキー人口(スノボを含む)はピークだった1998年の1800万人から大きく減少し、2020年は430万人。76%減という落ち込みぶりだ。
結局、新潟県湯沢町を襲ったカネは地域に何を残したのか。『東京都湯沢町』で1989年の新聞協会賞を受賞した新潟日報は、その後も湯沢町の検証を続けている。
■参考URL
単行本『東京都湯沢町』(新潟日報報道部、1990年)
単行本『東京都湯沢町は今』(新潟日報報道部、1995年)
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