携帯がないと人間じゃない?……そんな社会を変えるための「つながる電話」

  1. オリジナル記事

◆「仕事を失い、携帯も止められたら、生活を立て直せない」

 これまでの利用者を大別すると、3つになるという。

 最も多いのは20~40代が短中期(1カ月~半年)で借りるケース。生活に行き詰った人の多くは料金滞納で携帯が止まっており、仕事探しなどのために再契約しようとしても電話会社から断られる。そうした人たちには、仕事が決まって給料をもらったら普通の携帯電話に切り替えてもらう。

 次に多いのが50~60代の人が長期(1年以上)で借りるケース。訪問介護を受けていた生活保護受給者が、コロナ禍でヘルパーらと連絡を取る場合などに使っている。3つ目は10~20代前半の人が超短期(1カ月程度)で借りるケース。親から虐待を受けている人を自宅から引き離して居場所を決め、その後の連絡を取る際などに使われているという。

「つくろい東京ファンド」の佐々木大志郎さん(撮影:本間誠也)

 

 なぜ、「つながる電話」なのか。取材に対し、佐々木さんはこう語った。

 携帯電話料金を滞納するということと、それによって社会的なIDを取り上げられてしまうという重さとのギャップを『つながる電話』で埋めたいと考えています。仮に、健康保険の料金が払えずに滞納して保険証を取り上げられ、受診控えが多発すれば大きな社会問題です。携帯電話が取り上げられることも大きな問題。それなのに軽く扱われています。仕事を失って携帯も失えば、新たに仕事を得たり部屋を得たりする大きな障害になる。そのことがまだまだ周知されていない気がします。

 スマートフォンを持っていれば、現在は電子マネーで買い物ができる。

 その買い物代金は通信料金と一緒に請求され、その結果、滞納して携帯が止まり、ブラックリスト入りしてしまう若い人たちが散見されます。携帯電話の与信機能が拡張したことで、誰もがブラック予備軍になっているのに、そうしたことも軽視されています。

 この事業のゴールはどこか。

 通信インフラがここまで重要になっているのに、あくまで民間会社(任せ)。水道や電気、ガスと少し異なっています。生活保護の扶助費の中で、通信費に相当するものが拠出されるようになれば、それが一つのゴールかな、と思います。

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本間誠也
 

ジャーナリスト、フリー記者。

新潟県生まれ。北海道新聞記者を経て、フリー記者に。

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