山梨県知事がCDRを「重要政策」に据える理由 こども家庭庁とCDR【3】

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◆CDRの出番は本当はないほうがいい

 最近では、レスパイト(休憩)ケアというのを始めました。子育てをしてるお母さんの負担を一時だけ軽減しましょうというものです。4時間おきにミルクをあげないといけないような乳幼児がいると、お母さんヘトヘトになるんですよ。一晩ホテルに行ってもらって、そこでは、お子さんを保育士が夜通しみてくれる。そして、お母さんはぐっすり寝てくださいというものです。

 きっかけは、シャーリーズ・セロンっていうアメリカの女優が主演する映画『タリーと私の秘密の時間』です。夜間のベビーシッターが出てくるんです。主人公のママは子育てにエネルギーを取られて眠れない。すると、人格の分裂を起こしちゃうんです。日中は子育てに苦労するママなんだけど、夜は、別の人格として家事を完璧にやるけど、最終的には……というストーリーです。

 「こういうことありうるよね。お母さんたちが休めるサービスを提供できたら役に立つに違いないね」と周囲と話をして、県としてどういうことができるか検討してもらいました。今はモデル事業の段階ですが、好評らしいです。

 ――親の負担軽減や息抜きは、子どもが安心して暮らせる環境作り、CDRが目指す子どもの死の予防にもつながりますね。

 CDRの出番は、本当はないほうがいい。ネタがなくて困っていますというのが一番理想的な状態です。CDRからレスパイトまで効果的に取り組めるのは、子育て支援局という独立部隊を作ったからです。だから、こども家庭庁には期待しています。こういうこと言ったら怒られるかもしれませんけど、山梨県の子育て支援局ぐらいのパフォーマンスをこども家庭庁が示すことができれば、多分、日本の子育て環境はよくなると思うんです。

長崎幸太郎知事。書は座右の銘「不惜身命」(撮影:穐吉洋子)

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フロントラインプレス取材班による連載『チャイルド・デス・レビュー 救えたはずの小さな命』(SlowNews)

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穐吉洋子
 

カメラマン、ジャーナリスト。

大分県出身。 北海道新聞写真記者を経て、ウェブメディアを中心に記事、写真を発表している。

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