世界最大規模の調査報道国際会議に飛び込んで 第3回

  1. How To 調査報道

◆国会議員「秘密」を暴くウェブサイト「オープン・シークレット」 

 同じ講演には、もう1人が登壇した。マイケル·ベッケルさん。政治資金の透明化を目指す非営利組織「イシュー·ワン」のリサーチディレクターだ。「資金問題を追う記者たちは必見です」とベッケルさんが紹介したのは、ウェブサイト「Open Secrets(公の秘密)」である。
先に紹介した「Follow The Money」が各州レベルの議員たちの資金に特化しているのに対し、こちらのサイトは連邦議会議員(国会議員)たちのカネの流れを調べるのに最適だという。

「オープン·シークレット」 のサイト

 「オープン·シークレット」の強みは、情報収集力にある。
 政治家たちの納税や献金などのデータを独自に収集し、調査結果を日々ウェブサイトで更新している。2020年10月1日に公開された新しいデータでは、「今年の大統領選挙の総経費は、過去最大の約110億ドルに達する見込み」とし、その詳細をグラッフィックやチャートなどでわかりやすく見せていた。
 では、カネはいったいどこからどこへ流れているのだろうか。一例を見てみよう。
 「Open Secrets」には、トランプ、バイデンの両陣営にどんな団体が、どれだけの金を寄付したが一目でわかるリストが掲載されている。
 それによれば、トランプ陣営の財源の52.88%が一口200ドル以下の「小規模個人献金者」、46.78%がそれ以上の「高額献金者」となっている。一方、バイデン陣営は、「高額献金者」が52.52%と最多で、「小規模個人献金者」は37.87%となっている。さらにウェブサイトでは、個々の献金者のリストも掲載されていて、政治家たちのカネの出どころが丸裸にされている。
前述したように、こうした非営利団体の存在に支えられているのが、米国の調査報道の特徴だ。各メディアの調査報道記者たちはもちろん、市民なら誰もが無料でアクセスできるデータベースがオンライン上にあふれていて、指先ひとつ、クリックひとつで誰もが調査報道を始めることができる。日本には見られない、ジャーナリズムを支える土壌である。

◆調査報道の未来とは 

 2020年のIRE調査報道国際会議では、参加した記者たちが口々に「今こそ、ジャーナリストの連帯を」と語った。
 新型コロナ禍でオンライン取材が基本となった今こそ、世界中のジャーナリスト同士がオンライン上で学び合い、ジャーナリズムの発展のために力を合わせる時だというのだ。筆者の把握した限りでは、残念ながら日本人ジャーナリストの参加は数人だったが、こうした場での学びは実に大きい。
 中東諸国のジャーナリストを育成する非営利団体「調査報道ジャーナリズムのための中東記者の会(Arab Reporters for Investigative Journalism)」の編集長、ホダ·オスマンさんは、「いま、世界中の報道記者たちはバーチャル·ラーニング革命の真っ只中にいる」と言った。
 「世界中の記者たちがパソコンの前で仕事をしている今こそ、国境や会社の枠を超えたコラボレーションの最大のチャンスです。他の国の報道から取材手法を学び取り、自分の国の報道にも応用することができるのです。例えば、新型コロナを取材する場合、国内のみの情報を探すのではなく、国外にあふれるたくさんの情報に目を向けるべきです。地元、国内、グローバル。この3つのレベルでそれぞれ一番信頼できる情報源を見つけ、それらを比較することが大切です。だからこそ、英語を学ばねばなりません。その分だけ、たくさんの情報にアクセスできるドアが開かれるでしょう」

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大矢英代
 

ジャーナリスト、ドキュメンタリー映画監督。 1987年、千葉県出身。明治学院大学文学部卒業、早稲田大学大学院政治学研究科ジャーナリズム修士課程修了。 現在、カリフォルニア大学バークレー校客員研究員ならびに早稲田大学ジャーナリズム研究所招聘研究員。

ドキュメンタリー映画 『...

 

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