政治の不正は政治部で、警察の不正は警察担当で 逃げ場を作らず臨む 「権力監視型の調査報道とは」【4】

  1. How To 調査報道

 権力監視型の調査報道とは何か。何を指針にして、どう進めたら良いのか。この記事はそうした疑問に答えるため、日本記者クラブ主催・第10回記者ゼミ(2015年11月27日、日本プレスセンター)で行われた講演を加筆・再構成したものだ。主に新聞社・通信社の若手、中堅記者にを対象にして「何をすべきか」「何ができるか」を語っている。6年前余りのものだが、権力チェックを志向する取材記者にとって、今でも十分に役立つはず。今回は連載の4回目。(フロントラインプレス代表・高田昌幸)

◆新聞記者には持ち場がある。そこで何をやるのか?

 新聞社や通信社といった組織での調査報道を考える際は、「権力監視報道を可能にする組織的な条件」も重要です。メディアはどうやって、調査報道を実践するか、その組織上の条件は何か、という視点です。

 まず「何よりも持ち場で自己の役割を果たす」が大事。これは先に説明しました。それから「最初は少人数で」やる。これも必須条件だと思っています。最初から10人で調査報道をやりましょう、このネタで、としてしまうと、絶対うまくいきません。

 うまくいかない理由は、たったひとつです。

 調査報道の取材は、そのテーマについて、みんなが同じ知識、同じ水準を保ちながら取材を進めていくことが大切です。情報も共有しながら、です。そうしないと、取材の分担が困難になり、チーム内に不協和音が生じます。その点、少人数のほうが話は早いですよね。10人が同じ知識水準、同じ理解力に達するというのは大変なことです。「この取材は誰々さんに任せたよ」と言ったつもりが、彼の理解がついていってなくて取材先できちんと質問できなかったとか、そういうことは往々にして起こります。ですから、最初は少人数で、絶対やるべきだと思っています。

1

2 3 4 5
高田昌幸
 

ジャーナリスト、東京都市大学メディア情報学部教授(調査報道論)。

1960年生まれ。北海道新聞、高知新聞で記者を通算30年。北海道新聞時代の2004年、北海道警察の裏金問題取材で取材班代表として新聞協会賞、菊池寛賞、日本ジャーナリスト会議大賞などを受賞。

 
 
   
 

関連記事