政治の不正は政治部で、警察の不正は警察担当で 逃げ場を作らず臨む 「権力監視型の調査報道とは」【4】

  1. How To 調査報道

◆記者クラブと調査報道の関係は?

 質問 先ほど、調査報道のチームを特別につくってやることについて、別のアプローチがあるだろうとおっしゃいましたけれども、いわゆるクラブに張りついていない、遊軍的な立場のメリットといいますか、どんなアプローチがあり得るか。

 高田 毎日新聞が1980年代にやったミドリ十字事件が晩聲社から、『偽装』という本になっています。その巻末に、当時の毎日新聞の大阪社会部の方が20~30ページ、「社会部遊軍とは何か」ということを書いている。

 当時の社会部遊軍は、半ば、イコールで調査報道チームだったようです。あれを読み返していると、記者クラブに張りついている記者もいるんですけれども、世の中の問題というのは全ての役所がカバーしているわけではない。

 ミドリ十字事件の場合は、社会部の遊軍チームが「731部隊で働いていた人たちがその後日本のどこに戻ってきたか」を調査しているうちに、日本ブラッドバンク(ミドリ十字の前身)で血の売買にかかわっている、そこで人体実験みたいなことをまだやっている、ということを掴んでいく。それの取材の流れをみていると、「731はその後どうなったかを調べてみよう」と言いながらミドリ十字のほうへ行くわけです。

 記者クラブでの張りつき取材は、日々、権力機構が何をやっているかをチェックするわけですね。ものすごく重要です。でも、もっと広いワイドな視野でいろいろな出来事を見ることも必要なことも当然にあるわけです。クラブ詰めが虫の目だとしたら、毎日新聞のこのチームは鳥の目。広く見渡しながらやっていく感じです。

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高田昌幸
 

ジャーナリスト、東京都市大学メディア情報学部教授(調査報道論)。

1960年生まれ。北海道新聞、高知新聞で記者を通算30年。北海道新聞時代の2004年、北海道警察の裏金問題取材で取材班代表として新聞協会賞、菊池寛賞、日本ジャーナリスト会議大賞などを受賞。

 
 
   
 

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