政治の不正は政治部で、警察の不正は警察担当で 逃げ場を作らず臨む 「権力監視型の調査報道とは」【4】

  1. How To 調査報道

◆政治の不正は政治部がやる、警察・検察の不正は社会部がやる

◆逃げ場をつくらず、ガチンコ勝負を

 それから「他部署に任せない」こと。これも非常に重要な、かつ、取材者として本来的な姿だと思います。例えば政治家の不正や不祥事。あれは基本的に政治部の記者が徹底取材すべきです。政治家の不正やスキャンダルは政治部の記者がやるべきです。警察のスキャンダルは警察担当がやるべきです。すべてガチンコでね。そうでないと、何のための担当か、何のために権力機構にベタ張りしているのか、ということですね。

 それを突き詰めた形が、私が10年ぐらい前にデスクとして手掛けた北海道警察の裏金問題です。あれは基本的に全部、警察担当記者が警察とガチンコでやりました。そのために記者クラブにいるわけです。

 お題目として「記者クラブは権力監視のためにある」と言われます。しかし、それをお題目のままにしてはいけないということです。当たり前ですけれども、外務省の権力悪は外務省の担当記者がやればいい。同じ新聞社の政治部の外務省担当記者が「外務省の不正の取材は社会部の仕事だ。社会部がやれ」などと言っていたら、思い切り言ってください。「ふざけるな、まずおまえがやれ。そうやって逃げるのか」と。

 これは絶対的な基本だと思います。

 何々部とか関係なく、記者クラブを拠点にして権力機構、行政機構などに張り付いている記者たちがガチンコで日々、相手と向き合う。これをやり続ければ、おそらく日本のメディアの力は、対権力との関係で相当に上がっていくだろうと思います。目の前の勝負どころで自分の逃げ道をつくるから、なめられるし、全体としての力は上昇しない。

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高田昌幸
 

ジャーナリスト、東京都市大学メディア情報学部教授(調査報道論)。

1960年生まれ。北海道新聞、高知新聞で記者を通算30年。北海道新聞時代の2004年、北海道警察の裏金問題取材で取材班代表として新聞協会賞、菊池寛賞、日本ジャーナリスト会議大賞などを受賞。

 
 
   
 

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