◆進化するオンラインツール
調査報道国際会議では他にもオンラインツールが紹介された。最後にそのいくつかを紹介しておこう。
★人物を探し出す「スポケオ」
ウェブサイト「スポケオ」は米国内の特定の人物や家を探すためのツールだ。名前で検索すると、人物の顔写真、誕生日、メールアドレス、所有する土地や仕事など、オンライン·オフライン上にある情報がまとまって表示される。
日本の似たようなサイトには「ネットの電話帳 住所でポン!」がある。NTTが発行する電話帳ハローページに基づく情報だとされている。ただし、無料版の情報は2012年版までしか見られない。
★顔認識機能で人物を特定する「ピン·アイズ」
探したい人の顔写真をアップロードすると、検索エンジンの顔認識機能がネット上から同じ特徴の顔を探し出し、一覧で表示される。
★目の前にあるものを調べる「Googleレンズ」
上記の「ピン·アイズ」と似たようにカメラ撮影機能を使ってイメージ検索、翻訳、スマホからパソコンへの文章コピーなどが可能。取材に役立つ。
★ツイッターをリスト化「ツイートビーバー」
特定のアカウントの過去の投稿を一覧で表示したり、二つのアカウントの関係性や会話を調べたり、さらには二つのアカウントに共通するフォロアーを一覧表示できたりと、14種類の機能をもつ。SNS上のやりとりを調べる先に役立つサイトだ。
筆者がこれらのウェブサイトを実際に使ってみると、検索エンジンでは表示されない写真や個人情報まで出てきた。「スポケオ」を使って、1年前に住んでいたカリフォルニア州の住宅の住所を調べてみると、航空写真、家の間取り、建築年、さらにベッドルームの数まで正確に表示された。性能の高さに驚く同時に、確かに取材には便利ではあるが、無防備に露呈される個人情報に怖さを覚えたのも事実だ。
だが、そんな一抹の不安をよそに、このような指先から始まる取材手法は米国を中心に確実に広がっている。このような調査報道のデジタル時代が来るなど、きっと10年前には誰も想像していなかったに違いない。
顔認識サイト「ピム·アイズ」で筆者の顔を読み込むと、オンライン上の写真がまとまって表示された
=終わり
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この記事の筆者は、フロントラインプレスのメンバーで米国カリフォルニア州在住の大矢英代さんです。2020年秋に記し、東洋経済オンラインに発表した記事3本を加筆修正し、再構成しました。
東洋経済オンラインでは、発表時の記事全文を読むことができます。それぞれ、下記リンクをクリックし、アクセスしてください。
世界最大規模の調査報道国際会議に飛び込んで 第1回
世界最大規模の調査報道国際会議に飛び込んで 第2回
世界最大規模の調査報道国際会議に飛び込んで 第3回