◆献金の「質的制限」も目の付けどころ
――違法な寄付を点検する方法を教えてください。「量的制限」に関するポイントは、鳩山氏のエピソードで見えてきた感じがします。では、「質的制限」のほうはどうでしょうか。政治資金収支報告書のどこをどう見れば良いのでしょうか。
本間 質的制限に違反する寄付をチェックするには、収支報告書の「寄付の内訳」を見てください。その欄に「寄付者の氏名(又は名称)」や献金額の項目があります。何が記載されているか。そこに注目します。寄付をしてはいけない個人や法人からの献金を受け取っていないか。気になった法人や個人があったら、今度はその個人・法人を調べます。国や都道府県の補助金一覧のデータ、信用調査会社のデータ、企業ごとの工事経歴書などを使ってチェックします。
こうした作業自体は、ある意味、単純で単調です。本当に地味です。一生懸命、書類をひっくり返しても何も出てこないことも再三です。何も出なければ、空振りです。でも、徒労ではないと思うんですね。これを繰り返していると、報告書を見る目は確実に鍛えられるし、付随して知識も増えます。それこそがジャーナリストの武器なわけですから。それにこうした地道な作業こそが調査報道の本質であり、権力監視に欠かせないものだと言えるでしょう。
――なるほど。納得です。
本間 もっとも、こうした調査には壁もたくさんあります。国や各自治体との請負契約を持つ企業からの寄付がないかどうか、それをチェックする際などには、「政治資金パーティー」が大きな壁になるんですね。政治資金パーティーについては、政治資金収支報告書に20万円を超える支払者しか記載しなくてもよいことになっています。選挙の数カ前に開催されるパーティーは普通、誰がどう見ても、選挙資金集めが目的ですよね? 国や各自治体の事業を受注している企業も相当数のパー券を買っているはずですが、それが表面化しない仕組みになっているわけです。
いくつかの都道府県知事について、選挙前にどんな企業から献金を受けていたかを調べたのですが、ほとんどの知事が選挙前の数カ月間、どこからも献金を受けていませんでした。代わりに、政治資金パーティーを開き、多額の収入を得ているわけです。政治資金パーティーについても、1社で20万円超のパー券購入があった場合、報告書に記載しなければなりません。しかし、どの知事もそこはゼロでした。
これに限らず、政治資金や選挙資金の仕組みを見ていくと、よくもまあ、これほどの抜け穴をつくったものだと呆然とさせられることがしばしばです。
(後編に続きます。「後編」はこちら)