パワハラを通報したら「報復」 降格・減給、監視カメラ付きの追い出し部屋… 裁判に勝っても課題は残った

  1. オリジナル記事

◆「人事権をもとに、また何かやってくるのではないか」

 内部通報や公益通報の結果、人事や給与などで報復を受けた者が、勤務先を相手取って裁判を起こすケースは少なくない。ところが、その種の裁判で勝ったとしても当事者は必ずしも一件落着とならない。典型例はオリンパスの元社員、浜田正晴さん(60)のケースだ。浜田さんはNHKのドキュメンタリ―番組「逆転人生」の主人公になったこともある。
 上司の不正行為を社内相談窓口に公益通報した浜田さんは、畑違いの部署への配置転換を命じられ、追い出し部屋で外部との接触を禁じられるなどした。「通報の報復による配置転換は無効だ」としてオリンパスを訴えて控訴審で逆転勝訴したものの、判決確定後も子会社への異動を勧められるなど適正な業務を与えられなかった。結局、「職位の回復」と損害賠償を求めて、再び会社相手の訴訟に踏み切らざるを得なかった(係争中に和解)。

 では、今回のシェフォーレ訴訟はどうか。原告2人に対する配置転換や降格・減給処分は判決で無効とされたが、元の職位に戻してほしいという地位確認は認められなかった。判決後、会社側は2人と面談したが、今も正式な職場などは決まっていない。

 フロントラインプレスの取材に対し、原告の弁護団はこう言及している。

 判決はあくまで処分などは無効ということで、今の職位に従事する必要はないとした一方、元の職場、職責に戻るというところまで認めていない。そのため、新たな職場をどのようにすべきかという問題はある。
 2人がどこの職場に戻るんだというのは、私たちが今まさに懸念しているところ。B氏の場合、(処分前に所属していた)総務課という部署が(機構改変で)なくなってしまった。精神的な不調が続いているA氏についても、会社側が安全配慮義務に基づいた処遇をしてくれるのか。それらの点が今、一番問題です。

 判決を受けて仮に適正な職務や勤務場所を定めたとしても、また人事権をもとに何か第2弾でやってくる可能性もある。そうした懸念が今後も残り続けるというのは、内部通報・公益通報をめぐる他の裁判のケースと同じだと思っています。

 判決からすでに50日余り。今も会社側から2人への謝罪は行われてはいないという。

1 2

3

本間誠也
 

ジャーナリスト、フリー記者。

新潟県生まれ。北海道新聞記者を経て、フリー記者に。

...
 
 
   
 

関連記事